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 遥は自分のスタイルを変えない。

 無理やり人生をコントロールしようとはしない。

 遥はずっと遥のままだ。

 だからその延長線上にあるもの。

 理想の遥。

 大人の遥を夏は頭の中でイメージすることができた。

 そのイメージが夏にとっての理想そのものだった。

 夏が遥と出会って七年の歳月があった。

 今年で十四歳の夏にとって、その人生の半分の期間を遥と一緒に過ごしたことになる。

 それは本物の遥ではなくて、頭の中にいる遥だったけど、それでも夏は満足していた。

 冗談ではなく本気で、この世界に生まれてきてよかったと思った。

 遥の生きている、この世界の上に。

「よくここがわかったね」突然、遥が言った。

 その質問に夏は答えない。

 ただにっこりと笑うだけだ。

 夏は手のひらでもう一度、海の水を掬ってみる。

 海辺からそれなりに離れた場所でも、水はやはりほんのりと暖かく、この海が本物の海でないことがわかった。

 偽物の月と偽物の海。

 でも、意外と悪い気分はしない。

 それは夏が偽物だからだろうか?

 では、本物の私は今どこにいる?

 私はいったい誰?

 あなたはなんで、そこにいるの?

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