第33話 そりゃ湯冷めもしますよ

シャワーを浴び終えて、ビールを片手にパソコンへと向き合う。

人は環境に慣れていく生き物のようで、

奏さんのサイトが再開していないことを、

まだかな?から、やっぱりな、に今ではなっている。


今日もサイトの再開していないことを確認だけはして、何やらアピールしてくるメール受信ボックスを確認する。


携帯だけじゃなくパソコンにまで締切の件を送ってるんでしょ?そうなんでしょ?なんて思いながら、ビールを口にしてリラックスしながらクリックする。


─────!?!?!?


危うくビールを吹き出しそうになった。

待望の(笑)奏さんからのメールが来ていた。


リラックスモードから頭が切り替わり、

メールを見る前にあれやこれや予想する。

なんせ、しばらく音信不通。

サイトも休止したまま。

自分の気持ちや思いを文章にして、自宅のポストに届けて数日後のメール…。

見るのが怖いくらいだ。


封筒が良いほうに転んだか、悪いほうに転んだか…。


微妙に震えてカーソルがプルプルしてしまいつつも、勇気を出してクリックする。


───封筒の中身を読みました。

貴方の私を庇うための言葉も行動も、

今なら理解できる気がします。

あの時は勝手に逃げるように帰ってしまい、本当にすいませんでした。


サイトも休止しているの知ってますよね?

今は自分のことが1番理解出来てなくて、そんな自分に戸惑ってて…。

だからそれが何なのかわからないうちは、再開なんかしないし、出来ないのかも。

────────────────────


…読んでもらえた。

すべてを伝えたくて書いた。それが嬉しくて安心からか力が抜けた。


「へっくし!」


ブルッとなり気づく。体が冷えていた。

それとは反対に、汗をかいたような缶ビールが机を濡らしていた。





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