第12話 落ちるまで落ちた……か?
終わった……。
アルバートがあれこれと説明している声が、右から左にスルスルと抜けていく。
あぁ、もうこれは無限地獄決定だ。
少しづつでもいいから、地位を上げてやろうと思った。今は名のない家であろうとも、他の家との交流のチャンスを見計らってつけこめば地位を上げられると思っていた。
全て、あっけない夢だったということだ。
あぁ、もう仕方ない。
ここで足掻いたって、どうしようもない。
俺はこのまま、そのジークヴァルトとか言う人のところで誰にも知られず細々と生きて そして死ぬんだ。そして、あの神に散々なじられて、無限地獄に叩き落とされるんだ。
諦めよう。
もう静かに、何にも傷つけられることなく、ただ朽ち果てるのを待とう_____
とか諦めると思ったか、バァァァカァァッッッ‼︎
こちとら五歳なんだよ、五歳‼︎
人生まだまだやり直せますー、まだまだ可能性ありまーーーーーす‼︎
俺がこんなハプニングごときで折れると思ったら大間違いだ、あのカス神。
てめぇの悔しがるツラを見るまでは、死ぬわけにはいかねぇんだよ。ど底辺で這いつくばってでも、お前の嫌がる顔が見てぇ。
無限地獄に堕ちちまったとしても、お前共々堕ちてやる!
「フッ……フフフッ……あはははははっ」
「ル、ルカ?どうした……何で笑って……」
口から漏れた笑い声にアルバートは戦慄するが、そんなことどーだっていい。
俺は今最高にすっきりした気持ちだ。
だって考えてもみろ、ここに居続けていたら俺はずっとこの家から出られず、親戚の集まりにも参加できず、それこそ世界征服の第一歩すら踏めずにいた。
その、ジークヴァルトとかいう奴が誰かは知らないが此処にいるよりはマシだ。
あぁ、くそったれの神よ。
俺が絶望すると思ったか?
悔しいか?恨めしいか?口惜しいか?
もっとだ。
もっともっと、悔しがれよ。
もっともっと、俺に不運を投げつけて来い。
その度に、お前を悔しがらせ イラつかせ 言葉にならないもどかしさを与えてやるよ。
「お、おーい、ルカ、大丈夫か?」
「すみません、お父様。少し取り乱してしまいました。けれど、この決断もお父様が僕を想ったご決断であると理解しています」
「ルカ……」
俺の言葉にジーンときているアルバート。
ふん、ちょろい。
「それよりもお父様、ジークヴァルト様とは一体どのような方なのでしょうか?」
「あぁ、確か学者?かなんかで、すごく頭がいいんだって聞いたよ」
随分とアバウトだな……そんな情報の少なさでよくこんなに可愛い息子を預けようと決断したものだ。
どうせ、シルヴィアや他の兄弟に言われてホイホイと騙されたのだろう。彼等からすれば、俺なんて厄介な問題児。こんな無駄に強力な力を持った子ども、さっさと何処かに捨ててもらいたいだろう。その気持ちも大いにわかる。
だがしかし、俺を安住の地から追い払った罪は重い。いつか必ず、このツケは払ってもらおう。必ず、だ。
夕方には、ロゼットも完全に回復した。
目が覚めた彼女は、光の速さで俺の部屋までやってきた。
「坊っちゃん、私は……私は……」
「ロゼット、ぐ、ぐ、苦じい……」
俺を締め上げるように抱きつくロゼットは、ボロボロと泣きながら何度も謝罪の言葉を口にした。
「坊っちゃんをお守りするどころか、このような傷を負わせてしまうなんて……私は使用人失格です!」
「い、いや、あれは仕方がないよ。それに、顔に傷を負ってまで……ゔぅ……ぼ、僕を守ろうとしてくれたじゃないか」
「ですが、ですが_____‼︎」
死ぬ、このまま殺される‼︎
ギブギブギブギブ‼︎
ロゼットの力の入った腕を叩くも、離す気はないらしい。
あぁ、俺はここで死ぬのか……?
「ロゼット‼︎あなた、何をしているの⁈ルカの顔色が紫になってるじゃないのっ‼︎」
「お、奥様?あ……ぼ、坊っちゃんっっっ⁉︎坊っちゃぁぁぁぁぁんっ‼︎」
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