第37話 王手

万頭がスーツの中からガラパゴス携帯を取り出した。



万頭「…この携帯…こいつが爆弾装置のリモコンがわりだ こいつのここを押せば爆弾は起爆する」



万頭が通話ボタンを2人に指し示した。



万頭「逆に機能を停止するならこの電源ボタンを長押しして携帯を切ればそれにともなって爆弾は解除される どうだ?子供でも分かる単純な仕組みと解除方法だろ だが1つだけ注意しろ… 携帯がオンの場合 そいつは圧力式だ…ブレーキペダルを引いた途端 ボンッ! あの世行きだからな…死にたくなければオフるまでお姉さんにはせいぜい踏ん張って貰わんとな」



エレナ「つまり あんたからその携帯を奪い取らないと七海さんは助からないって事ね」



万頭「御名答 俄然やる気が出てきたんじゃないか?エキサイティングな殺し合いが出来そうだろ?」



万頭が携帯をスーツの内へと仕舞い入れた。



エレナ「イカレてる…こんな世の中であっても私は人を殺す事が楽しいだなんて一度たりとも思った事はないわ……あんたは歪みきってる…完璧精神が病んでるわよ… サイコキラーな精神異常者は私が最も許せない相手 やってやろうじゃない のぞむところよ この勝負 タイマンで受けてたってやるわ」



美菜萌「エレナさん タイマンだなんて駄目です 相手はカザックのテロリスト犯なんですよ 不良の喧嘩とはわけが違います」



エレナ「でも結局やらなければ七海さんが殺される…救うにはやらなきゃ」



万頭「タイマンが不服か?俺はいっこうに構わんぞ あの老いぼれSPが束ねる弱小レジスタンスの所のミニスカポリス おまえも加わって2人掛かりでもな」



プッチン



そして美菜萌も万頭を睨みつけながら口にした。



美菜萌「たかが女2人だと思ってナメてますか?」



美菜萌がヘアゴムを咥え



後ろ髪を束ね始める。



急に美菜萌のやる気スイッチが入ったようだ



またエレナは車の後ろ扉を開くや荷台に置かれるある物を手に取った。



エレナが密かに忍ばせておいた護身用の工具



おニューの平バールだ



万頭「お姉さん ライトを点けろ」



そして七海により車のヘッドライトが灯され



万頭が黒の皮手袋を嵌めながら前へと立った。



万頭「ふっふふふ 闘志みなぎってきたかぁ……? さぁ 2人まとめて俺に首を取られに来い」



七海さんは死なせない…



この男…許さない…



エレナ「七海さん…必ず助けますから 少しの間辛抱してて下さい…」



生きた心地がしない七海は蒼白させながら数回頷いた。



美菜萌が長棒をゆっくり回し、万頭に正面着け



またエレナもバールを手にし、真っ正面で立ち止まった。



万頭とのバトル開始




エレナ、美菜萌vs万頭 1時28分



念入りに手入れが施されたボウイナイフを構え万頭が口にした。



万頭「それより銃はどうした?そんな釘抜きの工具で大丈夫なのか?」



エレナ「いらんお世話よ」



万頭「フッ ではっ ゆくぞ」



素早く踏み出した万頭がエレナ目掛けナイフを振るう寸前



横っ面に飛び込む木製の長棒が目に映った。



サイドへ廻った美菜萌からロングスティックが打振されるがそれをギリギリかわした万頭が足を止める



ヒヤッとさせた万頭の七三ヘアーが少々乱れ、視線を向ける先には睨みつける美菜萌の姿があった。



それから美菜萌が冷めきった口調で口にした。



美菜萌「へぇ~ 今のかわしましたかぁ~ 初老間近の年配の方にしてはいいレスポンスしてますね 流石はグローバルに非道をつくしてきただけの事はあります…か?」



万頭「…」



美菜萌「多少は口だけじゃ無くて安心しました…が…」



鬼神の如く憤慨する美菜萌の表情に万頭も指先でヘアーを直しながら表相を変えた。



そして左右の持ち手を軽快にスイッチさせたナイフを握り締め、万頭が美菜萌へ向けナイフを突き出そうとした 



その間際に



シュ



今度は長棒の突きが飛んで来た。



慌てた様子で、すかさずそれを回避、万頭の頭部を長棒がかすった。



美菜萌「へぇ~ これも避けるんですね おじさんにしてはリアクションいい方ですよ ですが先程あなたが馬鹿にしたマツさんに比べたら… ちなみにマツさんはもっと動きいいですから あの人は護身術のベテランですからあなた程度ならすぐに制圧、確保されちゃうと思いますよ」



完全に七三が乱れ、険しい表情へと変わった万頭



美菜萌「国際的な指名手配犯だからどんな大物かと買い被ってましたが…あなた爆弾以外の事は素人とさほど変わらないと違いますか?」



シュ



反応しきれなかった万頭の喉仏へ寸止めされた長棒が添えられ、美菜萌は淡々と言葉を並べた。



美菜萌「舐めてたのはどうやらあなたの方だったようですね…これならまだ鉤爪持った男や大鎌持った男の方のほうが強敵でしたよ」



万頭「くっ」



更に…



背後からそっと肩に置かれたバール



エレナ「王手ね 美菜萌さんの言う通り 大口叩いてた割にはもう終わり?大物テロリストが聞いて呆れるわ 女だと思って甘く見てたあんたの油断が敗因よ さぁ 携帯を早く出しなさい」



早くも決着か…?



だが…



万頭「ふふ なにが王手だ?もう勝ったつもりか?」



エレナ「えぇ ホントはこのまま後ろから頭を殴りつけてもよかったのよ これは殺し合いなんでしょ…」



万頭「ならなぜそうしない?俺がおまえの首をとるか…おまえ等が俺を殺すか… どちらかが死ぬまでこの勝負は終わらない」



エレナ「いいえ もう1つ選択肢があるわよ それはあんたの持つ携帯を奪取して爆弾を解除する……そしてここから去るって選択肢がね…いくらあんたが許すまじき異常者だろうと…私達はあんた達とは違う 人を殺すのは心が痛むから御免なのよ…これ以上私達に無駄な殺生はさせないで頂戴」



万頭「ふっははははは 違うだと?この後に及んで心が痛むだぁ? 笑わせるな 今まで何千もの命を奪い、血を浴びてきたから俺には分かる…臭うんだよおまえから… おまえの身体は既に血を吸った日本刀の様に死臭と血臭が染みついている 最初に会った時から臭っていた 俺と変わらぬ殺人者の体臭がプンプンとな…」 



エレナ「それは違う…私は違うわ…あんたなんかと一緒にしないで」



万頭「いいや 同等だな なのに…今になって人殺しは御免だと なんかのジョークのつもりか?笑えないな それに俺を殺さずにこいつを奪えるものか…まだ勝負は終わってないんだ」



エレナ「あぁ~ 面倒くせぇ~わね あんたの説法なんて聞く耳なしなんだから それとこのエレナ様の温情を無下にするなんてどこまで愚かな男なの じゃあ小突いてやるわ やっぱり一時の眠りについとけよ」



エレナが背後からバールを振り上げ万頭の頭を小突く態勢に入った



その時だ



ガチャ



助手席の扉が突如開かれ、寝ぼけマナコの早織が外へと出て来た。



そしてまだ半分寝てる状態の早織が目を擦りながら寝ぼけ声で口にした。



早織「何してるの…?」

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