第46話 テレビ業界における公権や世評への忖度の逆転現象について
ごきげんいかがですか?
ことわざなのか、ちょっと気の利いたフレーズなのかはわからないのですが(ことわざについては来月以降に勉強させていただきます)、こんなこと言う人がいますよね。「金は天下の回りもの」と。しかしですね、わたしの経験値から考えまするに、これは完全なる虚言であります。ですので、岩波書店や三省堂をはじめ国語辞典を編纂・発行してそこそこの利益を出している出版各社におかれましては、可及速やかに現行版当該辞典を書店から回収、即日絶版破棄し、改訂版を編纂し、新聞、自社HPにて、謹告と表して、自らの不手際と虚言を掲載したことを謝罪し、すでに購入されてしまった顧客に対して送料自社負担での回収、迅速なる返金作業をなしうるために緊急危機管理チームを発足させ、事態を穏便に解決するよう努力精進されることを強く求めます。全ては出版業界の誠意を公開するためです。それでなくても紙媒体が衰退することは自明の理であり、万が一にも不手際を隠蔽し、それが国語辞書を発行していない出版社の低俗週刊誌である『週刊文春』『週刊新潮』らに暴露されれば業界の信用は地に堕ち、大仰に申せは、日本国民の識字率低下にも繋がりかねない国家的重大事です。巨象は蟻に倒されますのでくれぐれもご用心ご用心。
念のために論証をしておきましょう。「回りもの」と言うことは円環をなしていると言う意味であります。JR山手線が実際に循環していますのでその一列車を見ればすぐにわかりますが、渋谷駅を出発した列車は内回りであろうと外回りだろうと終電でもない限り、必ず渋谷駅に戻ってきます。これぞまさしく「回りもの」でありましょう。
しかるに、わたしの身を振り返りますところ、かの悪夢たる、躁病のおり、Amazonさんはじめ各企業にたくさんの金銭を振込み、多大なる利益を供与しました。あれから、七年経ちますが、その時の巨額の金銭はわたしの元に一切還元してきていません。全くもって金銭は「回りもの」でないことを身を以て証明しました。これを持って現行国語辞典は虚言を掲載していると断言出来るのです。あえて新語・流行語大賞を狙うならば「金は天下のお尋ね者」と記すべきでしょう。以上。
あまり、間に受けないでくださいね。ここからようやく本編なのです。最近、養父に「お前の噺はマクラの方が面白すぎて、本末転倒、七転八倒ですね」と嫌味を言われましたが、わたしは別に噺家ではありませんし、高校生の時、わたしの弟子入り懇願を強硬に拒否し、わたしを経済学部に強引にぶち込んだ、当の本人である養父の言うことこそ不条理です。
テレビというメディアは不特定多数の方が視聴するものですから公平中立・正確無比な番組を製作する義務がありますが、あまりにも杓子定規が過ぎると、まったく面白みがなく、お偉い坊さんの説教を拝聴するのと同じですよね。テレビなど当初は「電気紙芝居」と映画業界あたりから揶揄されていましたので、簡潔に考えれば「娯楽」に過ぎず、ニュース以外にはある程度の自由奔放さがあって、さらに破天荒で斬新なアイデアを盛り込んでいかなくてはなりません。そこには多少のアクシデントや諧謔性、官能趣味など、倫理の範囲内での逸脱という若干矛盾した行為があってよく、事実、草創期にテレビの世界へ足を踏みいれた若者たちには、フロンティアスピリッツが旺盛にあったのです。「楽しくなければテレビじゃない!」という言葉が全てを表しています。
ところが、これはあくまでもわたしの推論にすぎないのですが、いわゆる『オウム真理教事件』の際にTBSの社員が坂本弁護士一家のビデオを教団側に手渡して、その結果として、坂本弁護士一家が殺害されるという、報道に携わるものの服務規程にも人間倫理も反する行為が発覚して以降、テレビというメディアへの不信感の強まりと、公権や国民による無言の圧力によりテレビ界にあった自由の尊重は大幅に制限され、結果として、言論の自主規制の強化、これはデリケートな問題なので書きづらい面も、あるのですが突き詰めれば「どこまでが差別的で人権を侵害する言葉であり、その言葉を制限したり禁止用語のリストに入れるか」ということであり、いまは、その線引きがMAXになっています。例えばふだんわたしたちが何気なく使っている「床屋」と言う言葉。これが実は差別的用語なのです。でも、商店街に「まちの床屋さん」という看板などを見かけるのですがね。要は「理髪店」と言えと、やんわり強制されてるのですね。しかし、現行の日本国憲法には「言論の自由」が明記されています。小説家の中には意図的に「この、お〇〇こ野郎」みたいな挑発的単語を伏せ字なしに書く人もいますが、この場合、憲法云々よりもその小説家の品性にいささか、疑問をですねと曖昧な感じで有耶無耶にごまかしますよ。
まあ、あとは異常なまでの注意喚起の文言ですね。簡単に言えば「諸説あります」「個人の見解です」などのことです。元々はサプリメントなどのCMで「効果があります」と断言してしまうと、薬事薬価法でしたか? あれに引っかかるリスクを回避するための方便だったと思うのですが、いまでは様々なクレームに対する事前の備えと言うか、単に、言い訳するときの武器になっているようですね。
いずれにしろ、テレビからは自由な空気が消え、保守的なものが大半を占めてしまい、お年寄りばかりが惰性でテレビを視聴し、若者は他のメディアへと軸足を移し、ちっとも面白くない番宣のための番組ばかりになり、最近のわたしはテレビの主電源を落とす日が多くなりました。その裏でこっそり民放各社はどこか一局だけが突出したオリジナリティーを発揮せず、放送禁止用語等のコンプライアンスが一並びになるように相互監視を怠らずにしていると思います。どこか別のところに気を配って欲しいですね
そんな中、本来ならば、政府に厳しく監視されているはずの、公共放送、NHKだけがいまのトレンドに反して、挑戦的かつ革新的でオリジナリティーに溢れた、面白い番組を作っています。まあ、その最たるものは『チコちゃん』ですね。彼女のおかげで筒香選手も真の全国区なれたのではないですか。そのほか、昔は絶対にタブーだった、企業名や商品名を平然と言っているのは、古い人間からしてみると、かなり衝撃的でしたねえ。
ただ、NHKの場合、時の権力のさじ加減一つで、すぐに元の黙阿弥に戻ってしまう宿痾がありますので、この状況が永遠に続くことはないでしょう。
ではごきげんよう。また勉強して来ます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます