第45話 フォーエバー・ブルーの心境
ごきげんいかがですか?
あの、常連の読者さまの中には、わたしのくだらない文章を読まれたときに得る幻視感覚から、わたしのことを「明るくて、ちょっと大雑把で、ウィットに富んだ、笑顔の絶えない善人かお人好し」くらいな人物像を心の中で描いている方もおられると思うのですが、そういった、まあまあいい感じの人とですね、わたしの真の姿というのは実のところ、全くの対極におりまして、真のわたしは「ネガティブ思考の局地にあり、いつも最悪の事態を想定しており、クソがつくほど真面目かつ頑迷。一度こうすると決めてしまったら、それがたとえのちに間違っていたと知れても、自説は死ぬまで曲げない。さらに、近くにある洗濯物が五分くらいで乾くほどの超ドライで砂漠にいるような皮膚感覚。ことさら『笑い』についての見識は相当厳しくて、自分の話すことの内容のほとんどが洒落や虚言、ギャグ・ジョークの塊みたいなものなのに、自分以外の身近な人が放つ、決まりきった面白みのない冗談など、理解することすら出来ないし、片頬の筋肉さえもピクリと動かない。つまり、お愛想でも笑ってあげないという、かなり、取扱いに困るほど面倒くさいタイプの男」なのです。
もっと面倒なことは以前も少しお話ししたような気がするのですが、もし「方向音痴」を行政が一種の障害と認めるのであれば、わたしは必ず「方向音痴障害1級」に認定され、結構な金額の障害者年金をちょうだいし、横浜市営バスに無料で乗車出来るなどさまざまなな恩恵に預かることになるでしょう。いくら引越してまもないとはいえ、立派な(過去のことです)大人が迷子というか、おウチにたどり着けないことが一回ではなく、複数回も起きているので、病状はかなり深刻と言えましょう。ですが、精神科医に相談しても、これを治せる処方薬など存在し得ないでしょうね。
さらに病気自慢に至っては、“病気のデパート”との異名を持つ、元大関名寄岩と疾病数番付で東西の横綱を張り合えることが出来ますし、来日した、ヘレン・ケラーがわたしの悲惨な人生を知り、あまりの驚きで、目、耳、あと一つは忘れましたが、それらが劇的に回復して、三重殺でも三銃士でも隠し砦の三悪人でなくて、そう、いわゆる三重苦から救ってあげられるくらいの多重苦に陥っているのが、誇張なき現実なのです。絶対にわたしは前世でジェノサイドを完遂していて、その罪科によって天から下されたバチが、何度かの転生の果てに現在の決して標準的ではないはないですが、一小市民であるわたしになぜか思いっきり当たっているのです。もはや一日に一回は必ず起こる生活習慣病のようなお友だちです。
おそらく後世の人々はわたしのことをこう言うでしょう。「悪い意味で奇跡の人」せめて、サリバン先生のような方がそばにいてくれれば……それらしき人物は存在するのですが、その方は残念ながら極めて真っ当で巨木のごときメンタルを持っていながら知恵と知識を求める欲がなさ過ぎて、わたしとの言葉のコミュニケーションがほぼ不可能なのです。二人の間に、よき通訳がいればよかったのですが……
有り体に言えば、わたしという有機物はこの世界にとってはちょっとしたウィルス、または初期の癌細胞のようなもので、この世界が持っている免疫機能による攻撃で、常に駆逐の対象者になっている。言い方を変えれば西部劇によくあるように、諸所の酒場の壁にわたしの手配書が貼ってある、つまりは“賞金首”を持っているのであり、保安官たちはもちろんのこと、腕に覚えのあるならず者たちが絶えずわたしのお命ちょうだいと襲ってくるようなものです。もちろん、わたしも生命の保持という本能から「言葉のマシンガン打線」を猛攻させて敵を返り討ちにしていくのですが、いつ果てるとも知れない不毛な戦いの連続で心身共に疲弊して絶望のフチ子ちゃん状態なのです。それじゃあ、わたしでなくとも誰だって病んでしまいますよね。
わたしがあくまで個人的に頼っている神仏ではない方の壮大なる意識体である大自然的な神もわたしの排除を強く希望していると思われれているフシがかなり感じられ、もうその意思は仮に地球の全人類が信仰・人種・思想の壁を取り払って、全員でわたしの助命嘆願してくれても、決して受け入れられるものではありません。せめて、これをいいキッカケにして、世界の住民の連帯感が生まれれば、わたしのサクリファイスも多少の役に立ったと納得をすることが出来るでしょう。「進んで、地球の盾となる」、わたしのかすかな願いは、ゴッホのように、死後に評価が上がればなあという気持ちです。なので、数々の汚名を獲得し「負の三冠王」とか「終身名誉ネガティブ」というトロフィーはいい思い出程度にして「決して、晩節を汚すことなかれ」と自戒したいと思っています。いいえ、日々是決戦、代々木ゼミナールではないですよ。お客さん、あなた今日は飲み過ぎです。塩を舐めて、白湯を飲んでお帰りなさい。
今回、わたしは何を話したかったのでしょうかね?
ではごきげんよう。また勉強して来ます。
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