第40話 出来る限り歴史小噺をby久米宏
ごきげんいかがですか?
こんばんは、俵孝太郎ですと誰が言い切れますか? それとも、小泉孝太郎でしょうか? まさかの、はーい、榮太棲ですかな? もしくは、甲府の悪太郎こと、堀内恒夫元東京読売巨人軍監督だったりして……
誠に失礼しました。今だに、ピエーロ・滝口ノ武士の残滓が漂っているようです。早々にキャラクタープロフィールファイルに押し込んで、キャビネットの方へ片づけましょう。しかし、こうして見るとまだまだ未登場のキャラクターが結構いるんですね。作者のキャラクター作成能力は一見、高そうに感じてしまいます。しかし、全てのキャラが作者の性格を踏襲し、全員が精神疾患持ちというのは……無意味ですね。いっそ、近藤麻理恵だかこんまりさん、U.S.A.で大人気のあの方を呼んで、キャラクターをココロときめかせて殺処分して貰いましょうか? 最終的にはありのままの作者だけが姿、見せるのよ状態になるかもしれません。
しかし、こんまりさんもなんで、面倒くさい、片づけなどにココロときめくのでしょうね? あなたが荒稼ぎしたマネーのお片づけなら、ぜひともわたしに任せていただきたいのですが……
『逆説の日本史』シリーズなどでたぶんおなじみの作家井沢元彦。実は彼が『猿丸幻視行』という小説で江戸川乱歩賞を獲得してデビューしたミステリー作家だということ(もしくはだったということ)はご存知でしょうか?
その小説の中に折口信夫(おりぐち・しのぶ)という民俗学者・国文学者・および、釈迢空という号名の俳人が出てくるのですが、この人は柳田國男直系の高弟であり、作者の母校、もはや隠すこともないでしょう。國學院大学の発展に寄与した方です。ただし、彼はいわゆるLGBTで、弟子である若い男性と事実婚をしたうえに、その彼に逃げられて嫉妬に苦しんだり、復縁したり、ドロドロしているうちに弟子が自殺してしまうという痛恨事にあってしまう悲劇の人なのです。
次の話題です。
西郷隆盛に対する日本人の感情というものは、坂本龍馬にも負けず劣らずだと思うのです。明治天皇のお気に入りでもあったし、もちろん、わたしも好きですよ。西郷さんのお人形があれば欲しいです。龍馬と西郷の共通点はその死に様の悲劇の瞬間に人生のクライマックスを迎えるところでしょうか?
ただですね、いわゆる英雄西郷というのは、だいたい鳥羽伏見の戦い以降のことで、その前は名君と評される島津斉彬に心酔するあまり、陰の仕事というか謀略の徒だったということも忘れてはいけないと思います。もともと西郷は少年期に受けた腕の大怪我で戦闘力0に近かったのです。下級武士だった彼が重用されたのは実は明晰な頭脳のおかげだったのです。見た目と中身の違う人ですね。
続きまして。
源義経や沖田総司などから感じるイメージってなんですか? そうですよね、美男子ですよね。沖田の墓なんて今だに若いギャルたちがわんさかわんさかイェーイと集まって花を手向けているのだかどうだからしいのです。やはり二人とも悲劇的な死を迎えますが、西郷や龍馬との違いは「彼らのことを多くの人が美男子だと感じてしまうのは、後世の歌舞伎やテレビドラマなどで二枚目スターが演じたため」だということです。義経の風貌について書かれた記録(要出典)によると、出っ歯で、背がちっちゃくて、貧相みたいだったらしいですよ。沖田に至っては正確な記録はなく、全ては『新撰組始末記』というテレビドラマで沖田を演じた若き日の草刈正雄のイメージなのです。ある程度歳をとった方はほぼ全員、沖田総司イコール草刈正雄なのです。そのために、草刈の方が固定されたイメージに苦しむハメとなり『華麗なる刑事』とか映画『汚れた英雄』くらいしか良作に恵まれず、一時期は悪役ばかりやっていました。ようやく最近になってきて『真田丸』や朝ドラでの好演が評価されてよかったですね。モデル出身の俳優はたいへんでしょう。わたしもかなり苦労したのでよくわかります(?)
まあ『真田丸』つながりで、一つ。真田幸村という名前が全く根拠のない、一体どこから出てきたのかが、よくわからないものだというのはようやく周知の事になりましたが、江戸時代になって真田家が幕府に提出した家系図には幸村とはっきり記入されているらしいのです。真相は謎ですが、推測するに真田アレルギーの強い徳川将軍家に真田側が気を遣ったのではないかと感じます。
幸村の本名は真田信繁ですが、その名前は武田信玄(晴信)の実弟武田典厩(左馬助)信繁のものです。武田信繁は武田信玄以上の名将とも言われており、信玄たちの父、武田信虎は信繁を後継者にするつもりマンマンでした。しかし、信玄が密かに重臣らと図って、多数派にとなり、信虎に対してクーデターを起こし、信虎を駿河の今川家に追放し、自分が当主となります。普通こういう時、弟は殺されるのですが(例をあげると、織田信長は反逆した弟を殺しました)、信玄は信繁を生かして重用しました。その理由を推測しますに、もともと兄弟仲がよかったのと信繁の能力があまりに高いので殺すのはもったいないと思ったのではないでしょうか? 信玄はとても冷酷な男ですが「総領の甚六」的な部分もあって、兄弟愛みたいなものが散見されます。信繁も兄に真摯に付き従いますが、何回目かの「川中島の合戦」で大奮戦ののちに壮絶な討ち死にをしてしまいます。信玄は悲嘆にくれたそうです。その信玄も肺の病、結核か肺癌で割合と早く死んでしまいます。もちろん俗説では毒による謀殺が囁かれています。万が一それが真実ならば犯人は信長しかいませんよね。
結局、武田家で一番長生きしたのは信虎だったのです。皮肉なものです。
さあ、歴史小噺は絶対にウケないのでとっとと終わりましょう。令和の「遊び方改革」です。
ではごきげんよう。また勉強して来ます。
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