第19話 夏帆、宗介の先輩の家に泊まる

俺は夏帆を異性として見る事は出来ないと思う。

夏帆は昨日まで山下という女の子に変装していた。

まるで俺を騙す様に、だ。

何の為になのかがイマイチ分からないが。


その、山下に変装していた事により、俺は拭う事が出来ない何かが染み付いてしまい、かなり困惑している。

.....どうしたものか、と思う。


山下、つまり、彼女を忘れられない感情。

これも夏帆が計画とかしていた何かなのだろうか.....。


そんな日曜日当日。

俺は夏帆と買い物に出掛け、今、夏帆はニコニコしながら俺の腕に絡み付いて居る。

まるでデートの様な感じだが.....俺は苦笑するしか無い。


俺は夏帆をどうしても異性として.....見れなかった。

感じているから。

それは、恐怖とかでは無い。

悍ましい何かでも無い。

ましてや嫌いだからという訳でも無い。


ただ俺は.....夏帆が未確認生命体の様にしか見えないのだ。

まるで.....そう。

ただ知り合って数日の友人の様な.....。

これでは良く無いと思うんだが。


母さんの言葉を聞いてから.....納得した事もあるが.....。

俺は義妹を.....見つめるのは先にしようと思っている。

義妹を信頼したいという判断とかその全てを、だ。

そうしないと俺は。


だけど、そんな中だが当然だが俺は赤面はする。

夏帆は猛烈な美少女。

そして、かなり胸が見えそうで油断の有るワンピース。


山下の、義妹の香り、とくれば堪らないだろう。

柔らかな、ショートケーキの様に甘い香りだ。


「お兄ちゃん。次はこっち」


「.....ちょっと待て。お前は何処まで行くんだ。そしてどれだけ買うんだ」


「良いじゃ無い。付き合って」


コイツ、真面目にどれだけ金を持っているのだ。

近所のショッピングモール。


俺達はそこに来ていたが.....女の子向けのブランドショップに行きまくりで。

それから、買いまくり。

いや、マジかよ。


「書店のアルバイト代で稼いだけどね。今日だけ」


「.....あー。なるほど」


今日だけなら納得したわ。

それでこんなに買いまくれるんだな。

泡銭の様に使っているから心配したわ。


俺はその様に思いながら前を見た。

目の前から見た事の.....有る顔が歩いて来る。

そっちもこちらに気が付いた様で。


「.....菊池先輩?」


「宗介後輩?」


まるで大人びた格好だ。

ゆるコーデにポーチ的な。


目をパチクリする俺。

その際に横から冬山で登山している様な物凄い寒気が。

横を見ると、やはり夏帆がジト目で敵視していた。


これは.....どうしたものか。

その様に考えていると夏帆は手の中で爪を立てていた。

俺は?を浮かべながら見る。


「お兄ちゃんがお世話になってます。佐賀夏帆です」


「.....宗介。噂の義妹さん?」


「.....そうですが.....」


ちょ、オイ、いやいや。

幾ら何でも握り締めすぎの様な感じだ。


手から血が出ているぞ。

俺は陰ながら慌てる。


だがそんな事は御構い無しに。

顔を死神の様に引き攣らせて義妹は話す。


「お兄ちゃん.....を宗介と呼ぶのは止めて頂きたいんですが?」


「.....え?.....あ、ほほう?君は.....もしかして宗介の事が好きなのかい?」


「.....別に.....違いますけど.....」


いや、それは嘘だろ。

しかしながら、夏帆はかなりイライラしている様に見える。


何故こんなにも女性にイライラしているのだ?

俺はその様に思いながら、夏帆を見る。

菊池先輩は顎に手を添えて、探偵の如く続ける。


「.....ふむ、だとするなら、お兄ちゃんを取って欲しく無い抵抗かな?」


「.....」


「あのね、そんなに寒気を出さなくても大丈夫。私は.....仲は良いが、君のお兄ちゃんを取る気は無いからね」


「.....信頼出来ませんが?」


夏帆はギンッと目を鋭くしながら菊池先輩を見る。

うーん、ふむ、と困惑顔で菊池先輩は言った。

そしてちょいちょいと俺に手招きをする、菊池先輩。


「.....君の義妹はアレかな?何か.....感情不安定が有るのかい?」


「.....それは.....ちょっと俺の事を見過ぎですが.....夏帆にそれは無いと思います.....多分」


「.....でもね.....君の義妹は.....ちょっと何かを感じるよ。怪しい何かを.....これは先輩としてどうにかしてやりたい気分だ」


その様に話していると。

背後から凍て付く視線と共に脅す様な声がした。

まるで地震でも起きそうな。


「何をヒソヒソ話しているんですか。私のお兄ちゃんを取らないで下さい。良い加減にして下さい.....」


その様に怒り気味で話す、夏帆。

俺達に向いて、だ。


そんな中で、菊池先輩が顔を上げた。

それから、真剣な顔付きで、話す。


「.....夏帆さん。私の家に泊まる気は無い?」


「「.....は!?」」


「.....君の事が知りたいから。.....それから君には色々と教えてあげよう」


いや、まさかだろ。

俺はそんな言葉を受け入れるとは思えない。


夏帆は人に教わる事を嫌う。

その様に思いながら、夏帆を見る。

しかし、夏帆は暫くしてゆっくりと頷いた。


「.....良いですよ。私もアンタを知りたいんで」


「.....私はアンタでは無い。.....仮にも先輩だ。菊池弓という」


「.....チッ.....!」


そんな最悪の状態で。

来週の土曜日から夏帆が菊池先輩の家に泊まる事になった。

何でこうなるって言うか。

大丈夫か、菊池先輩は?

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