第10話 野営
*
『
短髪黒髪の好青年で、武器は黒色で柄の近くに真紅の球が嵌め込まれた大剣。
そして、銀の鎧を身に纏っている。
そんな彼がリーダーを務める『宵の三日月』。
彼を含めて五人で成り立っているらしい。
『
両腰から下げた一尺程の短剣が二つ。それが彼の武器である。
以前は『双剣使ダブルセイバーい』だったらしく、二つの短剣はその名残だと、深緑の髪を揺らしながら「ニカッ」とした笑みを零していた。
『
普通の『
黒めの肌と皺、白髪から想像するに、若者の集まりでもある『宵の三日月』では相当な年配者だと推測出来る。
そして無口だ。
『
自分の身の丈程もある巨大な狙撃銃を担っている。
先端部には刃渡り20cm程の幅広の刃が付いているため、接近戦になっても闘える様だ。
頭には紺色のターバンを巻いていて、目元以外をその布で覆っている。
そして最後に紅一点。
『
紅蓮の髪に黒のフード付きローブが特徴で、服装越しでもわかるボンキュッボンのモデル体型と綺麗な顔立ちは、見る者を魅了する。
武器は魔導師らしくスタッフであるが、両端に大きな持ち手のコブが付いてるのは珍しい。
( 守られるのって久々だなぁ…。)
車窓(と言っても布だが)から時折外を眺めながら、心の中でそう呟くメイ。
割と窮屈な乗合馬車の車内には、メイの他に家族連れやカップル等の老若男女が詰められている。
恐らく最年少で、身寄りも無いメイは退屈していた。
こんな時、現代社会ならスマホに夢中になっているだろう。
ひっぱりハンティングや、100人でのサバイバル等を思い出し右手が疼く。
( くっ!静まれ!私の右腕!! )
膝の上のトカゲが右腕を抑えるメイを怪訝な目で見ている。
( 退屈だ...。 )
車輪が街道の砂利を踏み越える小刻みな揺れ、車窓から入り込む暖かな陽射し。
時刻は10時頃になるか。
メイの瞼が重くなるには、そう時間はかからなかった。
暗闇。
どこまでも続く永遠の闇。
目の前に漂う金色の
──我、サブルスペイト──
──汝に願う──
──この世界を──
ハッと目が覚める。
月明かりが車内を照らすが、乗客は自分以外誰もいない。
トカゲが肩で寛いでいるのを確認し、立ち上がり、伸びをする。
「...ふっぁああああっはぁーーっ!」
背骨がポキポキと鳴り、同時に欠伸まで出る。
どうせ皆途中で降りたか、野営の準備をしてるのであろう。
( ...少し寝すぎたかな。)
少しと言うには些か疑問が残るが、4~5時間は寝ただろう。
メイが乗降口(荷車の後ろ側)にテクテクと歩き始めると、ひょこっと『
「あっ、メイちゃん起きた?」
微笑みを零しながらメイを手招きする。
( やっぱりね。 )
メイが乗合馬車を降りると、街道の待避所の様な拓けた場所で『宵の三日月』と『行商人』ワンズが野営の準備をしていた。
恐らくレヴィは、メイが起きるまで見張りをしていてくれたのだろう。
「他の利用者さん達は?」
「他の皆はワン国内の研究都市で降りたわ。ドレイムへ行くのはメイちゃんだけね。」
アントランド王国の東の領国『ワン』。
どうやら他の利用者はそこで降りた様だ。
レヴィの説明だと、今は『ワン』と『ドレイム』の国境を大きく跨いで鎮座する湖『レイオン』の北側に居るらしい。
確かに心做しか涼しい気もする。
「おう、起きたか。」
メリルがメイを確認すると、皿を手渡す。
ゼリー状の携行食と、パン、ジャーキーの様な干し肉が乗っている。
「え、食べていいんですかっ!?」
「勿論だ。君には少し少ないかもしれないがな。」
そう言いながらメリルは微笑む。
横に座るリヒャルドは、それを聞いて「カッカッカッ!」と爆笑していた。
そんなことないですっ!と膨れながらも礼を述べ、自分達も空いている簡易ベンチに座る。
携行食をちびちびと食べながらメリルの説明に耳を傾けた。
「今夜はここで野営する。男は外で、依頼主であるワンズさんは荷馬車、女子達は乗合馬車で眠る。見張りは1時間交代で二人ずつ、『宵の三日月』が行う。出立は明朝7時だ。異論は無いな?」
周りを見渡し、皆が頷くのを確認する。
「それじゃあ、各々自由にしてくれ。」
その言葉を待っていたかの様に、男衆は『エーテルビール』の大瓶を取り出し、酒盛りを始めたのだった。
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