クリスマスその二

 結婚して、二度目のクリスマス。さっき楓くんから仕事が終わったと連絡があったからもう少しで帰ってくる。

 去年はお店で食事をしたけど今年はお家クリスマス。色んなごちそうを用意して、プレゼントも出しておく。

 実は今年のクリスマスは二人で過ごす最後のクリスマス。だから大事にしたい。

「ただいま~。」

「おかえり、楓くん。」

 玄関に行って、おかえりのキスをする。リビングに行くと楓くんが驚く。

「こんなに用意したのか?最近体調悪いのに、大丈夫か?」

「えへへ…始めたら楽しくなっちゃって…。」

「まあ、それならいいけど…。気をつけろよ。」

「うん、ありがとう。」

 そう言うと、楓くんは私の頭を撫でて、着替えに行く。私はスープをあっためて、楓くんが出て来てから並べる。

「じゃあ、メリークリスマース!」

 楓くんの掛け声で乾杯する。楓くんはごちそうをおいしそうに食べてくれる。幸せだな…。

「咲良?食べないのか?また、体調悪いのか?」

「大丈夫だよ。楓くんが食べてるところ見てると、幸せだなって思って…。」

「なんだそれ。」

そう言って二人で笑う。ほんと、幸せだな…。

「…咲良、ホント最近おかしいぞ?」

「え?」

「なんか、いつもと違う気がして…。何かあったか?」

「…そうだね。今日、言おうと思ってたことがあるの…。実はね、今年が最後なの。」

「…何が?」

「二人だけで過ごす時間が…。」

 そう言うと、楓くんは何故か青ざめる。…もしかして、勘違いしてる?

「もしかして、俺のこと嫌いになったか?」

「違うよ。…家族が増えるの…。」

「え…?」

 楓くんは首をかしげる。よく分かってないみたい。私はお腹をさすりながら続けた。

「…三ヶ月だって…。」

 そう言うと、楓くんはパッと明るい顔をした。

「…!まじか!」

「うん。」

 私が頷くと、楓くんは私の隣でしゃがんだ。

「…触っていいか?」

「もちろん。」

 楓くんは、おっかなびっくり私のお腹を撫でる。

「ありがとうな、俺たちの所に来てくれて…。」

 そう言う楓くんの顔はなんだか泣きそうで…。

「咲良も、身体大事にしてくれよ。」

「うん、ありがとう…。これから、忙しくなるね…。」

「そうだな…まずはみんなに知らせないとな…。かーさんなんて泣くんじゃないか?」

「ふふ…お姉ちゃんも泣いちゃう気がする。」

 そんなことを言いながら、二人で笑う。でも、楓くんは不安そう。

「俺、いい父親になれるかな?」

 少しして、楓くんはぽつりとつぶやいた。

「楓くん…。」

「なんか、ほら、俺たちには反面教師がいるから…ああならないように頑張ればいいって分かってるけど…。それでも不安でさ…。」

「そうだね…。私も不安…。でも、きっと大丈夫だよ。」

「なんでだよ…。」

「だって、楓くんは私にとっていい旦那さんだもん!」

「…。」

 私が言うと、楓くんはポカンとした。あ、あれ?めっちゃいいこと言ったつもりなんだけど…。

「…ッフ!」

 と思ってたら、楓くんが吹き出した。

「な、何で笑うのよ~!!」

「わ、悪い…なんか…フフ…。」

「も~…って、わ!」

 そう言ってると、楓くんが私を抱きしめた。

「どうしたの?」

「いや、あの時を思い出した。」

「あの時?」

「うん、咲良と付き合い始めて初めてのテストの時。」

「あの時か~。」

 お父さんに、テストで後順位にならないと認めないと言われた時だ…。

「テストの順位発表の日、俺が弱気になってたら咲良に励まされたじゃん。あの時を思い出してさ。なんか、俺たちって変わらないなって思ってさ。」

「…そうだね。」

「それでさ、なんとなく大丈夫な気がしたのが、なんかおかしかったんだ。」

「なるほどね…。確かにおかしいかも!」

 そう言って二人で笑う。それだけで、なんだか不安な気持ちが薄らいでいく。

「なんか、俺たちって単純なのかもな…。」

「う~ん…それは言えてるかも…。」

 ひとしきり笑った後そう言ってため息を吐く。それだけで、なんだか楽しい家族になれる気がした。

「いや、でも…うん、最高のクリスマスかもな…。」

「ふふ、そうだね。…これからも、そう思えるクリスマスになるといいね。」

「ああ、もちろんだ。」

 私たちは指切りをして、食事に戻った。

 私は、今年のクリスマスをずっと忘れない、そう思えた。

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季節もの 雪野 ゆずり @yuzuri

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