第22話 どうして学校を辞めないの?

「よく勉強の効率うんぬんの話をいちばんに始めるやからがいるけれど、そういうやつに限って、そもそも絶対の勉強量が足りていない。いくら効率をあげても、0に何をかけても0なように、最低限の時間を割かないと何も始まらない」


「僕の感覚だと平均点以下の奴は、たいてい効率ではなく時間の問題。そして、君の場合が、ちょうどこのパターン。効率のことを考える前に、まず勉強する時間を確保すること」


「あぁ、わかっている。そうすると部活の時間がなくなるというんだろ。ただ、それは、ある前提を置いている。と」


「放課後の時間を部活に使うか、勉強に使うかと考えるから、どちらか一方を選ばなくてはならなくなる。だったらば、、その時間に勉強をすればいい」


「朝と昼は家で勉強して、放課後に学校に向かい、部活に専念する。ほら、こうすれば、部活の時間を削らずに勉強の時間を増やすことができる」


 話し終えたところで、香月の顔を窺うと、彼女はぽかんと口を開けていた。少し口早に話をし過ぎたかもしれない。おそらく、彼女の脳が理解に時間をかけているのだろう。


 一方で、話についてきた女が、目を吊り上げて、すかさず言った。


「却下です」


 だよなー。


 当然のように否定する白殿の行動は、僕の予想の範疇はんちゅうだった。


「ふざけるのも大概にしてください。何をしれっとシンパを増やそうとしているんですか?」

「別に聞かれたから答えただけなんだけど。だいたい反論してくるなよ。学べるところは学ぶんだろ」

「私の考えが浅かったようです。あなたのようにから学べることなど何もありません」


 あぁ、こういう宗教に嵌っている奴って多いよな。


「だいたい授業を受けずに、家で勉強するなんて意味がわかりません。それは、米を捨ててパンを食べるようなものです。米を食べなさい、米を」

「うーん。でも、僕、パン派なんだよな」

「そんなこと聞いていません。アナロジーがわからないんですか? バカなんですか?」

「いや、冗談なんだけど」

「耳障りです。やめてください」

「えー」

「授業を受けなさいということです。まじめに。学校の教師だって、日々、わかりやすい授業を行おうと努力しています。彼らの授業をまじめに受けることが、テストの点数をあげることの第一歩であり、最短の近道です」


 あいかわらず頭が固いな。


 まぁ、白殿の言うことも、あながち間違いではない。香月のいう次のテストとは、中間テスト。つまり、学内の教師が作る身内のテストである。とすれば、製作者の声を聞ける学校の授業には、そこそこ価値があるといえる。


 ただ、


「その意見は、問題を理解していないな。学校の授業をまじめに受けられないから、ここに来たんだろ。君の意見は一聴して正当のように聞こえるが、まったく問題を解決しない」

「問題を放ったらかしにしようとしているのはそちらでしょ。テストの点数が低いのは、学校の授業をまじめに聞いていないから。だとすれば、彼女の問題は、学校の授業をまじめに受けられないことです。つまり、いかにすれば学校の授業をまじめに受けられるか、が主たる問題でしょうに」

「問題設定を間違えている。今回の問題は、香月のテストの点数が低いことだ。学校の授業は、に過ぎない。その方法が、香月に合わない、もしくは、香月にとって効率的でない。とすれば、別の方法を選択するべきだろ」

「また、あなたはそんなことを。いいですか? 授業を受けるということは、学生の本分です。。つまり、学校の授業とは、なんです」

「見解の相違だな」

「あなたの頭がおかしいだけです」


 さいですか。


「まぁ、君の了解も同意もいらないんだけどね。僕は、香月に提案しているわけだから。それに、あくまで提案であって、決めるのは香月だ」


 僕がそう告げて、香月に視線を向けると、白殿も同様に香月の方を向く。


 当の香月は、うーん、と唸った後に、ハッと顔をあげて、とぼけたように述べた。


「堂環くんは、どうして学校を辞めないの?」

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