第二章 実験都市より
見えるはずなのに見えない星
エバーワールドの上にぽっかり浮いている、地球型惑星。エバーワールドの住民からは第1アース、もしくは【実験都市】、【バイサーバ】と呼ばれている。
この星、実験都市という名の通り、実験的に進化が操作されていて、どうなってしまうのもエバーワールダーの匙加減なのだ。
だが、干渉することができるエバーワールダーは厳しい試験を通った者だけだ。グリマラ出身者であると、ライベニ・トキト。マモリ・エレメト。カリミラ。がその枠に入っており、かつてはヤマメ・エレメトも入っていた。
この中で一番の古株はカリミラ。カリミラは実験都市においては、【魂のカリミラ】という名前で神のような地位を確立している。
この第二章は、カリミラ神から寵愛を受けたバイサーバ人だとも、バイサーバ人ではないとも言える人物にまつわる事件から始まる。
天空。マモリがいたはずの休憩所はすっかり他の神たちのたまり場と化していた。もともとは同じグリマラ出身者であるカリミラが管理していただけだったが、いつの間にやら他の神たちも集まっていた。
マモリは連絡が取れるが、トキトはいまだ取れずじまい。マモリも時々だが来て、居座っている神々を追い払ってくれた。カリミラは出来ないわけではないが、男神でありながら争いは好まないためほったらかしにして、たまに罠にかける程度。
ある日掃除と、日課の花の水やりや、家庭菜園をしていると、海世出身の慈悲の神が甲高い悲鳴を上げて、カリミラの鼻の先に駆けてきた。
「あんた、またやってくれたわね!今度という今度は許さないわ!!」
急な轟音に耳を塞ぎながら、自分より高い位置にある慈悲の神の顔を向く。
「なに?ぼくからしたら、ここに居られるだけ幸運だと思ってほしんだけど。」
「あんたの信者よ!また私の大切な信者が殺されちゃったのよ!!」
「それはお気の毒に。」
ジョウロをもって蛇口の方に向かう。それに慈悲の神もついていく。
「次はこうはいかないわ!絶対に復讐してやるんだから!私の中級神たち全員連れて、あのディ・ボムを見せしめに殺したげるわ!」
「あの人にはぼくが、3日経つと生き返る加護を付与してる。そんなものは効果ないよ」
慈悲の神は腕を組んで、フッフッフと不敵に笑う。
「私が何度も同じ手を使うと思って?」
とりあえず、今はさっさと帰ってくれないかなとカリミラは心でささやいた。
カリミラはヤマメと双子なのではないか?と言われるほどに背格好が似ている。服装は違うし、目は眠たげで常に影がかかっている。ヤマメとは違い、異形として生まれたので4つ翼が背から生えている。だが、ヤマメのように幼子に見える。
信者に注ぐ、愛はまさに病的で、寵愛による加護はいつまでも自分のもとに置いておくための物。気に入った種族は残すためにエバーワールドに連れ帰ったりしている。これまで咎められていないのは不思議な話だが、カリミラの行動は一度もエバーワールドの生態系に危害を与えたことはない。
さて、カリミラの寵愛を受けているディ・ボム。適当に流したもののやはり心配なのは変わりなかった。ボムはフラスコの中の小人こと、ホムンクルスだ。もとは別の用途の為に作られた者なので、とても体がよわい。そして、ボムより先に作られたホムンクルス、ピラ。ピラはボムとは違い、人並だ。そして、カリミラの中級神である。
二人はともに旅をしているので、カリミラは他が去ったあと、ピラに電波を送信した。
ピラはボムの少し破けた防具を補正していた。三つの手を器用に使って。
「どうして、ボムはこう、強くもないのに向かって行ってしまうかな。私や、他の奴隷たちに任せればいいものを。相手の間合いに飛び込んで、せっかくの私の防具を破壊させる。ボタン一つでも取れたら貴方死にますよ。って何度もいってるでしょ!!」
荷車の上に横になっている、ピラに似た、それよりも良い容姿と肉付きをしたボムに向かっていった。横になりながらも、かろうじて魔法薬の調合を行えている手を止めて、ピラに返答した。
「だから御免って。わるかったよ。」
「その言葉どこまでが本気か…。明日には忘れてるね」
ボムの馬鹿の一つ覚えのような謝罪の言葉のあと、手元の針に再び意識を戻そうとすると、ピラの頭の中に子どもの声が流れ出す。
カリミラの声だ。
【ピラ、ピラ…。聞こえてる…?】
聞こえてますよカリミラ様。
【突然だけど、ボムと別大陸に移動してほしいんだ。ワラキエ大陸…。そこなら、ボクの中級神が5人ほどいる。慈悲の神の中級神連中がどれくらいなものか分からないけど…、十分食い止められるはず。】
カリミラの策略むなしく、ボムは慈悲の神の陣営にわたり、拷問の末処刑されるのだが、それはいつもの流れ。
寵愛と、ピラの防具さえあれば嫌でもピラが見つけて、再び終わらない旅にでるはずなのだが、いつまでたってもボムは戻ってこない。
カリミラは【魂のカリミラ】と呼ばれる以上、魂を感知のだが、ボムの体から魂が抜け落ちてから早一週間、魂の行方がつかめないでいる。バイサーバ中に探りを巡らしても見つからない。
その代わりではあるが、忠実なピラは一人、ワラキエ大陸で他の中級神との合流を果たしていた。
中級神6人が集えば何が起きるのだろうか。
6人仲良く手をつないで円になってみればよい。カリミラ神が見えるはずの見えない場所へ連れて行ってくれる。
そのうえ、5人の中級神たちには仲間のいる場所へ行けるというおまけつきだ。
ボムの亡骸が入った棺桶を囲んで、6人は手をつなぐ。
この第二章は、グリマラに彼らが来たことでエバーワールドが動き出し、それは見つかった一番遠い星にまで感染する。いや、もう感染していたのかもしれない。
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