第25話 誘拐

喫茶室から鑑定室に戻ると、ナーリアは急な出張の仕事が入ったとの事で居なかった。


貴族相手に、急遽鑑定しに呼ばれたらしい。

たまにこうした貴族からの急な呼び出しがあるせいか、鑑定が滞ってしまうようだ。


「レアちゃんだっけ。俺ヤナサよろしくな」


ヤナサは、冒険者ギルドから交代で戻って来た所らしい。


「よろしくお願いします」


ヤナサと呼ばれた青年は、なんかチャラい感じでレアとしては苦手な部類だ。


「ヤナサ、ナーリアがこっちやっておけと言ってたぞ」


ドアラーガが指差す方向には、籠に入った沢山の薬草があった。


恒例の学院からの籠だ。

今度はクラス別ではなく、学年別になっているようで、その量が半端ないほど多かった。


「ゲッ最悪じゃないかよ!」


薬草、毒草、ただの草がチラッと見たレアにも選り分けされていない。


「えっと、こっちは仕事の続きしてますね」


残り半分を、何とか終わらせておきたい。

ギルド長からの呼び出しはなかったようで、これを終わらせたら聞きに行こうと思っていた。


残りの木箱の中身は、赤い宝石ばかりだった。

聞けば、ダンジョンの20階層より下に居る魔獣を倒すと魔石と一緒に必ずドロップするから多いらしい。

たまに宝箱からも出るらしいが、殆どが倒した魔獣からだろうとのことだった。


全部を終わらせるのに、結局日が暮れてしまった。

思った以上に赤い宝石が多かったのと、ヤナサが鑑定室にいる者全員に泣き付いて、手伝うはめになったからだ。


「レアちゃんありがとう。このご恩は忘れないよ」


夕飯はとっくに過ぎた時間だし、これは屋台で何か買ってから帰ろうかと思う。

ギルド長からの呼び出しは、結局なかったから時間も遅いし、聞きに行くのは諦める。


フードの中にいたクーから、糸巻きが終わったのか、回収してアイテムポーチにしまう。


「これ今日の分だから」


渡された給料は、銀貨9枚も入っていた。今日の分だけなら、銀貨7枚と言ったところなのだが、ヤナサの迷惑料で多めに渡してくれたようだ。


「じゃあ帰りますね。何かあれば工房に連絡お願いします」


目的の屋台広場に近い裏口から、出ることにする。

外は真っ暗で、街灯がかなり離れた間隔であるが暗い。


暗くて見えにくいなと、考えるとスキル暗視のアナウンスが脳内に響く。

こんな簡単な事で、スキルが発生するのかと思うが実際さっきまでと違ってくっきり見えるようになった。

そのせいか、気分が悪くうずくまっている人がいるのに気づく。

酔っ払いには見えず、気分が悪く休んでいるのかと、近づいた瞬間何か大きな布を被せられ当身を喰らい気を失った。


ガタガタと、車輪の音で目が醒める。

フードに入っていたクーが、レアを包んでいた布と言うよりかなり大きな袋を引き裂いてくれたようだ。

どれだけの、時間が過ぎたかも分からない。


すんなり抵抗もなく、レアが気を失ったせいか、持ち物はまだ盗られていなかった。

このままどこへ運ばれるかも分からない状態だが、暗視スキルで見える周囲にあるのは、レアを囲むように積まれた麻袋で、これで上手くレアを隠し町から連れ出したようだ。


このままでは、逃げるのも難しいと、積まれている麻袋を自分のアイテムボックスにどんどん入れて隙間を広げていく。

どうにか隙間を広げ、逃げ出せそうだ。


覚えているのは、商業ギルドを出て直ぐに攫われたことだ。

たまたまか、鑑定持ちと知ってか分からない。


ここは何処だろうと考えていると、スキルマップのアナウンスがまた脳内に響き、現在地の地図が脳内に表示される。


スレバの町が、どんどん遠ざかり森を迂回して隣国へ続くルートに馬車は動いている。

走っている馬車から降りるのは危険だが、なんとか出れそうだ。


夜道のせいか、馬車も速度が出せないようだ。

マップに写る赤い点が、4つ荷馬車の前方にある。これは敵と考えて良いだろう。

他に馬車の周りには誰も居ないから、レアが馬車から降りてもバレにくそうだ。


「クー、馬車から降りよう。フードに入ってて」



普通に飛び降りるのは、暗視で見えているがかなり怖い。

スキルジャンプ、スキル転移と、次々必要と思えるスキルが脳内に響く。

転移で、逃れるかと試すがダメで条件が合わないようだ。

仕方なく、ジャンプのスキルを利用して馬車から飛び降りた。


「止めろ!女が逃げたぞ」


すぐさま男が、大声をだす。

どうやらスキルで、レアが逃げ出した事が直ぐにバレたようだ。


「森に逃げ込んで、迂回して町にいくしかないかな」


レアはなんとか、森の中に逃げ込むことに成功はした。

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