向き合う 9

 黒鞄の中にあった鍵をネックレスにぶら下げてサエの首に掛ける。これはたぶん貸金庫の鍵だろうと思っている。ただサエはこれが伊藤や頭取達が血眼になって探しているものとは思っていない。ただ私の手掛かりになる重要なものという認識はある。

 昨夜またカオルが車で修繕する衣装を運んできて、明日の晩二人で来てほしいと告げて手紙を置いて帰った。カオルと東京に行くと言うことだ。会う相手は頭取だ。1週間欲しいとある。

「大丈夫?」

 胸から顔を上げたサエが心配そうに言う。

「その鍵がなければ殺されることはない。それにここまで来たらカオルに掛けるしかない」

「信じるわ」

「万が一も考えてフミコのところに泊めてもらうといい。困ったことが起これば姉さんに相談するのがいい。頼れる男のような女だからな。カオルと姉さんに抱かれるなら嫉妬しない」

「記憶が戻ったら?」

「その時はカオルに頼んでおく。これは想像だが、ここに逃げて来る前まで相当カオルに仕込まれていて男を愛す体になっていたと思う。ほれ、今でもサエに見詰められるだけでこんなに立ってしまっている。カオルはサエを妹のように思っている」

「うん」

「彼女も危険な綱渡りをしている。私も同じ綱を渡らなければならない。3人とももう隠すものも何もない。裸であそこまで愛し合ったんだから」

「戻ってきたらこの町に逃げてきた話を聞いてね?誰にも話さなかった恥ずかしい話」







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