流れる 1

 今日は親分が退院してくる。

 どうもサエの動きがおかしい。朝顔を合わせても視線を避ける。だが彼女が話してくるまで待つつもりだ。

「体はどうですか?」

 親分は姉さんに支えられて出てきてからソファーに掛けたままだ。姉さんは朝の人夫出しを終えたら戻ってくる。

「痛みは治まったが一人でまだ歩けんわ。とくに変わったことはなかったか?」

「ええ、少し番頭さんの小料理屋が気になりますが」

「支払いが止まったのか?」

「いえ。支払いは止まってないのですが、変な男が居座っているようです」

 これは姉さんも見てきたようだ。それで近々に番頭に会ってくると姉さんは言っている。

 その姉さんが戻ってきて私の横に並んでかける。小声で

「サエが来てるよ。まさか孕ませたのと違う?」

と言う。慌てて外に出る。青白い顔で立っている。

「店は?」

「友達に見てもうてる。ちょっとついててきて」

 どんどんと一人で歩いていく。もしサエが孕んだら祝福しようそんなことを考えている。サエはやぶ医者の2階に上っていく。なんとそこにはボンの彼女のフミコが腕に包帯を巻いて横になっている。

「昨日ホテルで腕を切ったんや」

「どうしたんや?」

「彼女子供ができたんや。でもボンとやったんはちょと前や。どうも今の父親の子やと思う。よく話したからもう自殺はないけど、ボンとの話を任せたいんや」

「そうか分かった」

と言ってみたものの気が重い。










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