過去に触れる 3

『5時に早引けして救急病院の待合室に来て』

とサエの置手紙があり本人は爆睡している。

 それで親分に早引きを頼んで、まだ陽の登っている町の中を抜けて阿倍野まで出る。

 待合室に入るとボンがリヤカーを傍に置いて立っている。

「どうしたんや?」

「昨日カラオケバーに男が飛び込んできてホステスを刺したんや」

 それきり詳しい情報はないらしい。しばらくしてサエが顔を出して病室に入る。流し目の女アヤだ。二人掛けでアヤを毛布に包んでリヤカーに積みこんで裏口から出る。

「横浜のやくざの男らしい」

「逃げてきたと言ってたな?」

「どうも関東やくざが教えたみたいやの。脇腹を7針縫ったけどどうしても姿を隠したいと頼まれた。犯人はまだ捕まってないのよ」

 やぶ医者の所に担ぎ上げる。

 どうも昼のうちにアヤの部屋から衣類関係を運んできているようだ。やぶ医者も例のごとくベットでアヤを半裸にして傷を見ている。思ったより豊かな乳房が丸見えだ。

「迷惑かけるわ」

「いいよ。イサムの蒔いた災いかもしれないから」

 どうもサエも詳しい話をボンから聞いているようだ。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る