過去に触れる 2

「番頭と部長やったらどちらが上や?と番頭がすねてたよ。何しろ30年も親分の会計をしてきたからね」

と姉さんが面白そうに言う。

「さあ出るぞ」

 親分の声がかかって一緒にタクシーに乗る。

 地上げ現場の手前で止まって、信用組合の本店の建物に入る。営業部長が直に出てきて、3階のの理事長室に案内する。

「久しぶりですね?」

 年配の理事長が握手する。

「あの物件で10億貸してや」

 朝番頭に見せてもらったが千日前に7階建てのビルを持っている。根抵当が20億ついていた。

「これは融資申込書と返済計画や」

「よく出来てますね?番頭さんの作とは思えませんがね?」

「この部長が書いたわ」

「融資書類を書きなれてるようですな?」

と言って名刺を交換する。

「取りあえずぶっちゃけた話聞かせてくださいね」

「あそこの地上げ中の一角の土地建物を買うのや。1年と長めに見てるが、半年で片が付くと思う」

「気つけてくださいよ。ITMファイナンスが絡んでますからね」

「買い手は上場企業やから」

「親分とは長い付き合いですから。いつまでに入れておきましょう?」

「月末の1日前で頼むわ」

 親分が飲み屋の寄ると言うので、通天閣で降ろしてもらう。私はボンの女将の店に寄る。

「さっき大変やったんで。パトカーまだいてるやろ。ホステスが刺されたんや」

 女将が暖簾の向こうを覗いて言う。










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