第19話 ジュピーリーナ・グラシウス
ウェルド公国魔導省の魔導旗艦『プリンシブァ』が正体不明の『魔人』の襲撃に会い、バルセリアに落下した。
事態を重要視した、魔導省の幹部は、ウェルド公王の次女、ルナリィア・ウェルドとの度重なる打ち合わせで、多くの資材と人材をバルセリアに投入する事を決定した、
此の裏には、ウェルド公王である、ダブレスト・ウェルドの意思と、公王の長女、マシリィア・ウェルドの忠告、『魔人』を西に入れてはいけない、と言う宣告があった。
此の時点で、ウェルド公国の仮想敵国は、周辺諸国から、『魔人』に変わった。
防魔省は、公王の要請で、現在建造中の、超魔導戦艦『ウェルダリア』を、対魔人決戦兵器と位置付け、その完成を急がせた。
魔導省はバルセリアを対魔人重要拠点と考え、ルナリィア・ウェルドの要請により、旗艦『プリンシブァ』をバルセリアで対魔人用戦艦に改装する事を決定し、
天才、ウェルセア・ギルスタンをバルセリアに派遣する事を決め、
また、魔導省の実動部隊、『飛翔騎士団』、団長、通称『闇のルース』事、ルーフェンス・ガイアードは、公女である、ルナリィア・ウェルドが襲撃された事を重視し、騎士団の精鋭、サーンディ・アーランド上級魔導士をルナリィアの護衛に派遣する事を決めた。
更に、ルナリィア・ウェルドの構想とする、対魔人戦艦を動かす、人材として、現艦長、現機関士長の変わりに、
艦長候補として、防魔大学の盟友にして、操舵、砲雷術の天才、バレンシア・サザナードを召喚する事を決定した。
『プリンシブァ』の落下から5日後の3月28日、魔導省は第一便として、バルセリアに向けて五十両の専用
その
それは公王が、防魔省、魔導省、娘であるルナリィア・ウェルドに厳命した、
準備が整う迄は、此の事を絶体に公民に知られてはいけないと、
偽装は、その為の措置であった。
だから、此の非常事態も、まだ、防魔省、魔導省のトップしか知らない。
また、ルナリィア・ウェルドも偽装の為に、一月の休暇を取り、国民の目を自分に集める事を決意した。
魔導省は、多くの資材、人材を此の落下地点に運び、此の地点で、魔導艦の改修作業を行う為、此の牧場周辺を大規模に買収し、専用の
第一便で、多くの仮設資材、仮設小屋が搬入され、遅れる事、数時間の第二便で、魔導重機が搬入され、続く第三便で魔導クレーンが、到着し、
此処に、対魔人重要拠点の建設が始まったのであった。
第一便、で此の拠点に到着した、
ウェルセア・ギルスタン
サーンディ・アーランド
バレンシア・サザナード
と、『星翔部隊』の副将
ジュピーリーナ・グラシウス
らは公女である、
ルナリィア・ウェルド
に此の作戦の概要を、急遽、建設された、仮設の作戦本部で聞いていた。
公女の説明を聞いた、サーンディ・アーランドは、
「信じられねぇなぁ、
ルナリィア・ウェルド、事、ルーナも、
「ああ、絶体そうなるし、もし公民の間に正体不明の化け物の噂が流れ、その事実が不明確な形で知れ渡ったら、只のパニックだけでは済まない、その隙に反社会的な奴等が絶体に動く、」
サーンディは、瞳を閉じて、少し考えた後、
「・・・まぁ、動くのは、間違い無いな。」
とルーナの意見に同意し、その答えを聞いたルーナは、
「父上も其を心配している、我々は、『魔人』と、公民の二つを相手に戦う事になり、戦いは更に不利になる、だからこそ、絶体に此の事実を公民に知らせてはならない!」
サーンディは、仮設小屋の固い椅子に深く腰掛けながら、
「其で、殿下は一月の休暇を取り、その間は戦艦が動かなくても、公民は誰も、その事に疑問を抱かない、って筋書な分けだ。」
ルーナは、頷きながら、
「そうだ、そして、此の事をルーフェンス団長に相談したら、団長は私の身を案じて、貴女を派遣してくれた、サーンディ上級魔導士。」
その時、その話しを黙って聞いていた、ジュピーリーナ・グラシウスこと、リナが、立ち上がって、
「団長は臆病過ぎる、殿下には俺が入るんだ、
サーンディ・アーランドこと、サディはリナを見ながら、首を振って、
「リナ、だからお前はバカって言われるんだ、副将のお前が部隊をほったらかして休暇中の殿下の側にいたら、皆、おかしいと思うだろうが。」
リナは、キョトンとして、
「えっ、だって、殿下の休暇は嘘なんだろ、だったら俺が殿下を守るのは当然だ!」
と自慢気に、話すリナに、
サディは、ダメだコイツって表情で、
「あのなぁ、だいたい、リナ、お前、要人警護した事有るのか?」
リナは胸張って、
「無い!」
そのリナの返答にサディは怒りながら、
「ぜえーってえ!ついて来るな!!邪魔だ!!!」
と彼女を怒鳴り、ルーナもリナの我儘に、困った表情をしながら、
「リナ副将、休暇と言っても、確かに公女としての仕事はする、それは、副将の嫌いな接待や愛想を振り撒く仕事だ、私と一緒だと有名な貴女も、其をしなくちゃいけないんだぞ、嫌だろ。」
リナは顔を青くして、
「確かに嫌だ。」
と降参するのであった。
サディは、変な邪魔者が引っ込んだ事に安堵し、
「で、殿下、貴女の明日の予定は?」
とルーナに聞き、ルーナは考えながら、
「確か、明日は、教魔省の依頼でバルセリアの
サディは、ちょっと顔をしかめて、
「
リナは、えって顔して、
「おいサディ、ガキだぞ、ガキは安全じゃねえのかよ。」
とサディに尋ねる。
サディは、リナをバカにした顔で、
「バカリナ、だからお前は素人なんだよ、いいか、ヤバイ大人は分かりやすい、だが、ヤバイガキは分かりにくいんだよ!」
リナが、
「分かりにくい?」
サディは、頷きながら、
「あぁ、だいたい、集団の中には、必ず一人や二人はヤバイ奴がいる、ガキが問題なのは、そいつは自分がヤバイ事をしてるって自覚がまだ、無いからだ。」
ルーナも、驚いて、
「自覚の無い、狂人!」
サディはリナの方を向いて、
「だからヤバイガキもそうでないガキも、ガキはどのガキもおんなじ面してんだよ!分かったか!バカリナ!」
リナは、流石に怒って、
「バカ、バカ言うな、バカ、サディ!」
サディも、
「バカは、お前だ、リナ!」
と、二人は口喧嘩。
そんな、仲の良い二人を見ていた、ウェルセア・ギルスタン、ことウサギは、思わず、クスと笑い、
サディがウサギを見て、
「笑うんじゃねぇ!!」
と怒り、リナも、
「笑うな!ウサギ!!」
と怒る。
ウサギは、ひぇーと心の中で叫び、
怖くて、泣きたくなるウサギであり、
そして、リナとサディの二人の漫才を見て、顔を見合わせ、お互いにやれやれと顔するのは、ルーナと、彼女の盟友、バレンシア・サザナード、ことバレンの二人であった。
こうして、五人の打ち合わせは、夜遅く迄、続くのであった。
そして、真夜中、
一人、夜空を見上げながら、
星に願うのは、
ジュピーリーナ・グラシウス、
・・・サディは、分かってねぇ、俺が、どれ程、ルーナ殿下の事を心配しているのかを、
・・・嫌、たぶん頭の良いサディだから、分かってんだ、だから、俺を、ルーナ殿下から遠ざけようとした。
・・・
辛い、
もし、殿下に何かが起きて、
俺が、殿下の側にいなかったら、
そう、考えると、辛い、
俺はグラシウス家の次女として生まれ、生まれながら力が強く、スタイリッシュな体だったらしい、
だから、両親は、星に感謝して、俺に天界の巨星の名前からジュピーリーナと付けた。
しかし、此の体つきは、俺の人生にとって、あんまり良い事は無かった、
言い寄ってくる
孤独だった。
防魔省の、面接官は、俺の体をじっくりと見ながら、君は魅力が有り過ぎる、前線は無理だが、省官の
勿論、殴って断った!
魔導省は、特技持ちの場合は、『飛翔騎士団』の団長、
ルーフェンス・ガイアード
が直接面接をする事になっていた、
当時の俺は、世間を知らなかった、ルースが何者かも知らなかった、只のスケベオヤジと考えて、面接に望んだ俺は、
初めて、人が怖いと思った。
オールバックの白髪に暗い真っ赤な瞳で、只、俺の事を見ている、ルースが言った一言は、
「人を殺せるか。」
只、その一言だけだった。
何なんだ、コイツは、
理由も無く、人を殺せる分けねぇだろが!
と、俺はその時、ルースを怒鳴った、
ルースは、
「そうか、」
と言ってその後は俺とは口を聞かなかった。
俺は、後で知った。
魔導省には、商売上手な役人の表の顔と、公国の為に全ての汚れ仕事を引き受ける、裏の顔が有る事を、
裏社会において、ルーフェンス・ガイアードは恐怖の名であり、
彼が、殺せと命じた者で、生き残った者はいないと言われている事を、
だから、彼は、
『闇のルース』
と呼ばれて、恐れられている。
そして、そのルースが団長として、率いているのが、
『飛翔騎士団』
表向きは、白い制服に飛竜のバッチで、誰もが憧れる存在だが、
彼等には、一つの噂が有る、
彼等が、黒い制服に着替えた時、
必ず誰かが、此の世界から消えると言う噂だ、
噂でしか無いのは、彼等の黒い制服を見て、生き残った者が誰もいないからだと、
サディとは同期だ、同時に面接を受けた時、彼女は、ハッキリと、
「殺せる!」
とルースに言った。
彼女は、俺とは覚悟が違った。
彼女は、『飛翔騎士団』に採用になった。
そして、俺は、てっきり、魔導省も不採用になると思っていたが、『飛翔騎士団』の、別導部隊、『星翔部隊』を作る事になって、
俺は、その部隊に採用になった。
その採用を聞いた時、俺はやっと、自分を生かせる仕事が見つかった、
そう、思って、
俺は、嬉しくてたまらなかった。
だが、喜びは、直ぐに落胆に替わった。
仕事が無かった。
責任者のルースは、俺達に決して仕事を回さなかったし、
いろんな、部所から寄せ集まって、出来た此の『星翔部隊』には、する仕事が無かった。
だから、俺達は、毎日、防魔省の真似をして、訓練する事で過ごしてきた、
何時か、自分達が活躍する事を信じて、
そんな部隊だから、魔導省の役人達は、誰も此の部隊の隊長になりたがらなかった、たまたま、なった隊長は、必ず、俺に
俺は、そいつを追い出した。
俺達は、明日を信じて、毎日、訓練を続けた、
それは、心の折れそうな、毎日だった。
そして、四年目、俺達がもう限界だと思っていた時、ルーナ殿下が、俺達の前に現れた、
最初は、俺達は、殿下は御嬢様の遊びで隊長になったと思った、
だから、ちょっと脅かせば、直ぐに逃げ出すと、誰もが思っていた、
だが、殿下は違った、殿下には信念があった、
俺達を、信じてくれた、
俺を、信じてくれた、
あの、誰にも、心を開かなかった、ウサギさえ、殿下に心を開いた。
あの、素晴らしい船を作り、俺達に活躍する場を与えてくれた!
その時、俺は知った、此の部隊は、殿下の為に作られた部隊で有る事を、
四年前からルースは、知っていたんだ、防魔省と殿下では、絶体に合わない事を、
ルースは、殿下が大学を卒業した時、殿下の理想とする部隊が必要な事を知っていたんだ、
だから、俺達を集め、此の部隊を作った、だから、俺達に仕事を与えなかった、
だから、ただ訓練をするだけの部隊に、誰も何も言わなかったんだ、
たぶん、最初から、殿下の部隊だと知っていたら、皆、殿下に近付きたくて、どうでも良い人材が沢山集まる、
其では、意味が無い、
此の、四年間は、殿下の部隊として、相応しい部隊になる事が出来るかの、
ルースの試練だった。
そして、
俺達は、ルースの試練に合格したから、
殿下を、俺達の隊長にしたんだ。
ルーフェンス・ガイアードとは、そう言う男だ、
だから、
皆、殿下が、
好きなんだ、
俺達は、殿下の為なら、此の命を捧げても
そして、『魔人』が、俺達を襲ってきた、
数多ある、魔導船の中で、何故、魔人は、俺達の船を襲撃したんだ?
何故、俺達の船なんだ、
俺達の船と、他の船とは何が違う、
答えは、一つだ、
『魔人』は、
殿下は特別だ、
俺も、そう思った、
船が、バルセリアの街に突っ込むと、皆が思った瞬間の奇跡、
あれは、絶体、殿下が起こした!
殿下、以外に考えられ無い、
殿下が、俺達を、街を救ったんだ!
だから、奴等が再び殿下を襲ったら、
今度は、命を掛けて殿下を救う、
俺は、そう決意した!
だが、ルースは、俺では役不足だと思っている、だから、ルースは殿下にサディを寄越した、
たぶん、ルースの事だから、サディ以外にも、絶体に誰かを寄越している筈だ、
ルースは、俺の事を信じてはいない、
・・・
ルースは正しい、
俺自身、分かってる、俺では力不足の事が、
分かってるんだ、俺では殿下を守る事が出来ない事を!
だけど、
だけど、
もし、俺のいない処で、殿下に何かあったら、
俺は、一生涯、後悔する、
だから、俺は、毎日、毎晩、天界の巨星に願ってるんだ、
俺に、力をくれと、
殿下を、皆を救える力を、
毎晩、泣きながら、
願ってるんだ、
あの、星に、
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