5年後(5)
「その女はね夫に愛人が何人もいることを知っていたの。でもね愛人ぐらいなんとも思わなかった。初めから女は年老いた夫なんか愛してなかったから」
なんだなんだそういう系の話か、あんまり得意じゃないな、と僕は心の中でため息をつく。
「金のために結婚したってことですか?」
「それ以外何があるっていうのよ」
はい、すみません、となぜか謝ってしまう。
「夫の資産は相当なものだったの。だから女は気持ち悪いマゾヒストの夫の相手をしてやったわ。それなのに、夫は女に内緒で遺言を残していたの、自分が死んだあと愛人たちにも遺産がいくように。総資産六億円のうち妻の女に残るのはその半分の三億円に減っていたの」
六億とかマゾとかいきなりすごい内容がでてきたな。
「その女の人はもしかしてそのエムの夫を殺したとか?」
「あなた馬鹿ね、そんなことしたらすぐに妻が疑われて警察に捕まるに決まってるじゃない」
自分がその警察だと言うと今の何倍も馬鹿にされそうだ。
「じゃあどうしたんですか?遺言を書かせ直したとか?」
「書かせ直しても同じ、またいつ自分に隠れて夫が書き直すかも知れないでしょ。女はね夫の財産全てを奪ったの。振り込め詐欺にあったふりをしてね。残すお金がなくなってしまえばあげたくてもあげられないでしょ。女にも夫以外に男がいたの。その男に振り込め詐欺のふりをさせたの」
彼女は首をかしげると何か考えているふうに黙った。
「でもそれが振り込め詐欺って言うんじゃ」
僕がそう言うと「あら案外頭いいじゃない」と褒められる。
「でもね、女の愛人である男は欲が出たのか女をゆすり始めたの。女は男が邪魔になった。当たり前だけど不倫の二人の関係を知る人はほとんどいなかったから、女はどうやって男を消そうか考えていたわ」
「消すって殺すってことですか?」
女性は口元に笑みを浮かべうなずく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます