2
準備が出来た二人は、鉱山跡に向けて歩みを進める。
それから直ぐに、切り立った岩肌が二人の眼前に現れた。
「この岩山沿いに、鉱山跡の洞窟があるはずです。」
「アジトはその中にあるのかしら、周囲に小屋とか休憩場所とかない?」
「私も、ここには初めて来るのでちょっと。」
困り顔のロムは辺りを見回しながら答える。
「じゃあ、とりあえず洞窟を目指しましょうか。」
レイナ達は岩山に沿って歩く。岩山の近くの地面は、硬く踏みしめられており、先ほどまでの森とは違い、幾分歩きやすかった。
しかし、数分ぐらい歩いた所で、二人は異変に気付く。
「ロム、アジトの周囲にしては、静かね。」
「そうですね・・・出払っているんでしょうか?」
野盗の、しかもお頭がいると思われるアジトに近い場所だというのに、野盗の気配すら感じない。
「罠?」
レイナは慎重に周囲を見渡す。しかし、レイナは罠を見破る術を持っていない。
「・・・侵入者を察知する罠なら、一つぐらいあってもいいんですが、仕掛けるなら森の中に仕掛けるでしょう。それに、罠はないとあの人達も言っていましたし。」
ロムの言葉も一理あるが、レイナは少し周囲を確認することにする。
「仕方ない。ロム、ちょっと力使うから気を付けてね。」
杖を右手に持ち、勢いよく振りながらレイナはロムに注意を促した。
「ええ、判りましたけど、周囲の環境はあまり壊さないでくださいね。」
「なるべく気を付けるわ。」
岩山を背にして、レイナはロムより数歩前に出て、大きく息をする。
「はっ!」
レイナが地面に杖を強く突き立てる。すると、レイナの向いている方向に向かって、突然大地が波打ち始めた。
「えいっ!」
レイナは突き立てた杖の頭を両手でさらに押し込む。次の瞬間、大地の波が大きくなる。
「うぉ!!」
その波打つ地面に周囲の草や木が飲み込まれる。それと同時に、森の奥から複数の人の悲鳴も聞こえた。
「声?!」
ロムが人の声に気付く。レイナはロムに目線を送り、頷いた。
「・・・よっと。」
レイナが杖を大地から引き抜くと、波もおさまり、地面は元の硬さを取り戻した。
膝上ぐらいまであった草は、全て地面の中だ。木も同じように地面の中に埋もれている。
「相変わらず、凄いことをサラッとやりますね。」
ロムは目の前の光景に感嘆の声を漏らす。
「これで、少しですよね?」
「そうね、まだまだいけるわ。それよりも。」
レイナは声のした方向を見る。その方向からは、ざわめきが聞こえて来る。
「行ってみましょう。」
二人は、ゆっくりと低くなった木々をかき分けて声のする方へ向かって行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます