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岩山に向かう二人。周囲の木は徐々に大きさを増し、周りの木の密度が狭くなっていく。林から森へと進んでいる証拠だ。

「ロム、気付いてるかもしれないけど。」

レイナはロムに確認する。

「ええ、さっきのですね。」

「・・・泳がせましょう。」

林に足を踏み入れた時から、二人の後をつけている何者かの視線を感じていた。

しかし、二人は視線に気付かない振りをしながら森の奥に進んだ。

森の道は草が鬱蒼と茂っていて、もはやどこが道なのかがわからない。

「ロム、大丈夫?」

シスターローブだと歩きにくいだろうと思ったレイナは声をかけるが。

「ええ、慣れてますから大丈夫ですよ。」

格好に似合わず、草をかき分けてすいすいと歩くロム。

「そういえば、あっちではこんな森は普通だったんだっけ。」

「そうですね、陽の光がこぼれてくるだけましですね。」

少し立ち止まり、上を見上げてほほ笑むロム。しかし、言葉からは不穏なものを感じる。

「私は、暗黒大陸には行ったことないんだけど、もう戻りたくない感じ?」

「たまに戻ろうって思いますよ。でも、次元の扉の前に立ったら、まだ帰れないって思うんです。」

ロムはさみしそうに答える。

「前言ってた、ロムの仕えてた国王様の話?」

「そうです。あの方との約束は守らなければなりませんから。」

レイナの方を向いて、ロムは話を続ける。

「約束はありますが、今はあの街の人達をしっかり守らなくてはなりませんからね。」

ロムの言葉からは確固とした信念を感じる。

「だって、私を受け入れてくれた人達ですから。」

そう言って、ロムは微笑んだ。

「その言葉を聞いて安心したわ。もし暗黒大陸に戻るって言われたらどうしようかと。」

レイナは胸に手を当ててほっと息を吐く。

「その時は、レイナに相談しますよ。お願いしたいコトがたくさんありますから。」

ロムがにこやかにほほ笑み、再び岩山に向けて歩き出す。

「厄介事はやめてよね。」

「さぁ、どうでしょうかね?」

ロムに追いついたレイナは、ロムの顔を覗き込む。

ロムは笑顔を見て、レイナもつられて笑っていた。

「でもね、薬作るから人竜を探して角を削ってきてとか、聞き忘れた遺言を死んだ人に聞いて来てとか、無茶な依頼ばっかりだったじゃない。」

本当に無茶な依頼ばかりだったと。レイナは少し呆れながらロムからの依頼を思い出した。

「え?全部レイナのお知り合いにお手伝いいただけたんでしょう。」

「知り合いでも、そんな事気軽に頼めないわよ。」

普通の人が聞いたらとんでもない嘘だと思われる事をさらっと言うレイナ。

「でも、ちゃんとこなしてくれるのがレイナですものね。」

「まぁ、ロムがそんなとんでもない依頼を出すって事は、急いでるって事でしょうからね。」

二人は、それぞれの立場が判っているために、お互いの厄介な依頼は極力請け合う事にしている。

「これからも、色々とご迷惑をおかけしますね。」

「お手柔らかにね。」

レイナに笑顔を向けるロム。その表情を見て、レイナは半ばあきらめの表情を返していた。

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