黒きモノ
1
「本当にこの道で合ってるんでしょうか?」
奥まった場所へ案内される二人、その薄気味の悪さにロムが呟く。
「今は、信じるしかないでしょ。」
「そうですね・・・。」
「まぁ、何かあったら判ってると思うし。」
ゴルガに聞こえるようにレイナは言葉放つ。その言葉にゴルガはビクッと肩を震わせる。
「さて、さっき聞きそびれたから歩きながらでも教えてもらえる?」
「は、はい。」
「制御できなかった模倣体は、人型だけ?」
「いえ、全部です。」
ゴルガの意外な答えに、レイナは首をかしげる。
「じゃあ、なんであなた達は襲われないの?」
「襲われないように、識別用のペンダントをしています。」
レイナはゴルガの胸にあるペンダントを見る。何の変哲もないペンダントだが、レイナはあることに気付く。
「それって、あなた達では制御できないけど、本国は制御できるって事じゃない!」
「それと同時に、あなた達は捨て駒という事ですね。」
「え?あ・・・。」
自分の立場をようやく理解したのか、ゴルガは一瞬立ち止まる。
「そ・・・それじゃあ。」
「遅かれ早かれ、処理されたのかもね。私たちが来たのは、幸運だったかもしれないわよ。」
ここに人が少ない理由がおぼろげながら判ってきた。他の連中は別のアジトに集まっているのだろう。
生贄は一人で十分というわけだ。
「あなた、人望ないのね。」
「ぐ・・・。」
苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるゴルガ。
「まぁ、とりあえず今は死なないから。安心していいわ。」
「とりあえず?」
レイナの言葉に引っかかりを覚えたゴルガは、思わず聞き返す。
「案内してもらって、模倣体を全部片づけるまでの安全は保証するわ。」
「その後は・・・?」
「国に帰る事ね。まぁ、帰ったら処分されちゃうだろうけど。」
「そんな・・・。」
「なら、素直に国に戻らずにどこかに隠れ住むことね。後はあなたの自由よ。」
ゴルガはそれっきり黙ってしまった。
それから数分後、赤い×印のマークが貼ってある物々しい扉が三人の目の前に現れる。
「この奥なの?」
ゴルガは無言で頷く。
「開けて欲しいけど、死なないって言った手前、私が開けなきゃダメね。」
「レイナ、判ってると思いますが、中に居ますね。」
ロムの言葉にゆっくりと頷くレイナ。そして、扉に手をかける。その手からも嫌な気配が伝わってくる。
「行くわよ・・・。」
レイナがゆっくりと扉を開け、中を覗き込んだ。
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