最期の甘露

Twitter300字SS第51回お題「涙」より

(300字、改行・スペース含めず)


しょっぱいと聞かされていた涙が「甘い」と気が付いたのは、意外にも大人になってからのことだった。

あまり泣かない子供だったため、涙の味を知る機会が殆どなかったのだ。


きっかけは、お恥ずかしながら、人生初の彼女に振られた時。

目の前で思い切り泣かれた後、「さよなら」の捨て台詞と共に走り去った彼女の涙が、偶然唇に飛び散ったから。

甘露と呼ぶに相応わしい味わい。

失恋も吹き飛ぶ至福の味だった。


その後、個人的な研究により(詳細は割愛)こめられた想いによって涙の甘みが変わることを知った。

特に私への愛情がこもる涙が一等甘くて美味い。


そう今、君が流してくれている涙。


臨終の際にその涙を味わえるとは、まさに重畳。

悔いはない。


【了】

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る