第110話≪帝都女学院七不思議・2≫
新・ここは世田谷豪徳寺・12(さくら編)
≪帝都女学院七不思議・2≫
ビー玉の群れは、ゾロゾロと北門の坂道を転がっていった。
「「「「「ふっしぎー!!」」」」」
みんなが、一斉に声を上げた。七不思議の最初、北門の重力異常の撮影に取り掛かっている。
どう見ても北門の位置が低く、校舎側が高くなっているように見える。だのにビー玉の群れは、北門から校舎に向かって転がっていく。なんか遊園地のトリックハウスのようだ。
「これは、トリックハウスの原理よ!」
理系の成績トップの松坂莉乃が指を立てる。
「いいこと、このアプローチの道幅、校舎側の方が細くできているの。他にも植木の高さを意図的に刈り込んで、校舎側が高く見えるようにしてあるのよ。このアプローチも微妙に曲がってるじゃん。そのへんにも秘密があると思う」
「あたし試してみるで」
バレー部の名セッターの山口里奈が大阪弁で名乗りを上げる。
最初にバレーボールを転がした。数秒じっとしていたボールは、ゆっくりと、坂道を登って行った。
「やっぱり……」
「体で試してみる」
横になって転がるのかと思ったら、バレーボールをトスしながら、坂道を登って行った。
「どう?」
米井さんが、坂の上の里奈に声を掛けた。
「不思議やなあ……感覚的には、こっちの方が高い」
みんなは、当惑顔で、顔を見合わせた。
里奈は練習中に体育館の床の傾きを感知し、顧問を通じて学校に申し入れたことがある。
測量の結果、0・3度床全体が中央に向けて傾斜していることが分かった。残念ながら体育館は七不思議ではなかった。単に老朽化で床が沈み込んでいるに過ぎない。
ただ、この傾きでは公式戦などはできなく、バレー部のみんなは密かに喜んだ。欠陥のある会場で公式戦はできない。つまり帝都は当分公式戦の会場になることはなく、試合会場の準備や後片付けをしなくても済むからである。
「ま、こんなこともあろうかと、専門家呼んでるの」
「え、そうなの?」
「だったら最初から、専門家の人にやってもらったらよかったのに」
「演出よ、演出。まずみんなで試して驚いておく。ここまで撮ってあるわよね」
「うん、ばっちり」
写真部のオソノがスマホを示した。
「やあ、遅くなってごめん」
北館の校舎の陰から、二人のオッサンを従えて佐伯君(ほら、チェーンメールで騒ぎになった米井さんの双子の兄貴。でも彼って病気のはず。大丈夫かなあ)が乃木坂の制服で現れた。
「佐伯君のお父さんのコネで、測量技師の人にきてもらったの。よろしくお願いします」
「いや、持ち場の仕事が終わったとこなんで、大丈夫ですよ。じゃ、四ノ宮クンかかろうか」
四ノ宮……あたしは、その名前にビビッときた。黄色のヘルメットの下の顔は豪徳寺の水道工事のガードマンのニイチャンだった!
「こういう現場は時々あるんですよ。ま、視覚的な勘違いがほとんどですけどね」
測量技師のオジサンが準備をしながら呟き、莉乃が「どんなもんだ」という顔をする。
オジサンはトランジットという三脚付の測量機械を出し、四ノ宮君は測量用の物差しの化け物みたいなの持って、4か所ほど立った。
「測量したかぎり、校舎側の方が3度、高さで30センチほど高くなってます」
「えー!?」
「よかったら、ボクが説明するよ」
ヘルメットを脱ぎながら、四ノ宮青年が言ったので、あたしたちは驚いた……。
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