第109話≪帝都女学院七不思議・1≫

新・ここは世田谷豪徳寺・11(さくら編)


≪帝都女学院七不思議・1≫        





 シリコン騒ぎで『攻殻機動隊ARISE』は観損ねてしまった。


「来年『攻殻機動隊』新劇場版が出るから、その時まで待てよ」

「だって、今度の観とかなきゃ、話分かんないよ」

「まあ、なんとかしてやるって」

「そんな曖昧なあ。ソーニー、それでも自衛官なの!?」

「外に対しては曖昧なのが自衛隊だ。勘弁しろ」


 涼しい顔で、ソーニーは船に戻って行ってしまった。


「ま、辛抱しなよ。シリコン機密漏えいから、うちの家守ってくれたんだからさ。ARISEならブルーレイ出たら買ってきてやるから」

「あたしは、映画館で観たいの!」

「高校生は、そこまで贅沢言うもんじゃないの」


 さつき姉もソーニーに負けないくらいの涼しさで、ホンダN360Zに乗って大学だかバイトだかに行ってしまった。


 で、いささかプリプリしながら学校へ。時間が無いので、いつもの裏路地を通って駅にいく。

 

 もう終わっていると思った水道工事をまだやっている。ガードマンのニイチャンが指示棒、正式には赤灯、英語ではTraffic Wandというらしい。ソーニーとの雑談で得た知識。ソーニーの小難しい話はわからないけど、こういうどうでもいい話はよく覚えている。


 遠目で見てもけっこうイケメンだ。彼の横をすり抜ける時、赤灯が、あたしのスカートひっかけて、そこからラブロマンス……などは起こらなかった。

 ニイチャンは慣れた手つきで、赤灯を振って「ご迷惑かけます」あたしは「ども」どうにもロマンスには縁のない生まれつきのようだ。ただ、通る時に工事のおじさんが「四ノ宮くん……」と言っていたので、苗字だけは記憶した。


 学校に着くと、気にかかるのは米井さん。


 例のスマホ事件から幾日もたっていない。クラスでたった一人の関係者としては気を遣う。


 事情知らない人のために解説。


 短縮授業の日にTデパートで、アベックの米井さんを発見。いっしょに行ったマクサ(佐久間マクサ、茶道部で家元の娘)がよせというのに接近。お邪魔虫になる。

 その後米井さんカップルのチェーンメールが回ってきて「あんたでしょ!?」と米井さんに詰め寄られて、担任の水野先生が無実を証明してくださった。


 でも、米井さんの彼、実は生後間もなく別れた双子の兄だということが発覚。


 それまで彼氏として付き合っていたのを兄妹の関係に戻す努力の途中だった。そんでもって、彼の佐伯君は不治の病で余命いくばくもない身。水野先生やチェーンメールに関係した(実行犯は、まだ不明)子たちは、感涙の涙を禁じ得なかった。


 ところが、米井さんは委員長だけのことはあってか、切り替えが早い。


「次の授業自習だから、文化祭の取り組みについて話し合います。いいわね」


 と、臨時のホームルーム。休んだ先生も自習課題の点検しなくて済むし、自習監督の先生も職員室でラクチン。そして、なにより文化祭の取り組みは早く決めたクラスほど、何かにつけて占有権がある。あとから被った企画を出したクラスは同じものはやれない。


「一年のときは、二三年に先越されて、展示とかバザーとか店番ばっかで、ろくに文化祭楽しめなかったじゃん。で、今年はできるだけラクチンで、かつ楽しげな企画でいこうと思います」


 一年のときは不満タラタラの子が多かったので、みんな米井さんの次の言葉に耳をそばだてた。


「もし、他に企画があったら言ってね……じゃ、あたしから。えへん!」


 さすが委員長。注目を集めるのが上手い。


「帝都女学院は古い学校で、調べると不思議なことが一杯あります。それをまとめて『帝都七不思議』で発表しようと思います。できたら原因究明までやりたいけど、未解決のまんまってのもウケると思います。7人で一話ずつ二十分~三十分。あとは遊んでいられまーす!」


 みんな、おもしろーいという顔をしたけど、そんなのあったっけ? という顔にもなった。


「あるわよ。例えば北門から学校に入ると、校舎の方が高く見えるんだけど、実は低いの。知ってた? 題して重力異常の北門!」


 ああ……というみんなの顔。校内の、いわば都市伝説。そんなのを米井さんは五つ紹介した。「あとの二つは?」当然の疑問である。


「ま、やってるうちに見つかるでしょう」


 さすがは米井さんだと思った(^_^;)。

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