第二十二便 雰囲気を壊さないでっ!

 目と耳と口がスマホ経由になって、ホントに便利だ。


 エンジンを切っておけるのはもちろん、固定のドラレコと違って、スマホは移動が簡単。

 ブルートゥースは最長10メートル、少なくとも5、6メートルは離れても大丈夫だから、オレ自身の近くなら、オレはお兄ちゃんのいるところに〝出張〟できる。

 今までは、荷台で起きてることも〝感じる〟ことしかできなかったけど、今は自分の目で(ってのも変だけど)見ることができる。


 お兄ちゃんが荷台を確認する間、オレは、荷台の入り口(後部)にスマホを立てて置いておいてもらった。

 最初は上着の胸ポケットに入れておいてもらおうとしたけど、カメラが隠れちゃうから。


「ちょっと工夫が必要だね」

 お兄ちゃんが言ってくれたから、多分何とかしてくれると思う。


 で、肝心の積み荷だけど、荷崩れは問題なかったみたい。いつも通りきっちり固定してるからね。

 さっすがお兄ちゃん。


 ……正直、あんまり気にしなくてもいいような気もするけど。もしここが実は元の世界だったとしても、確実に納期には間に合わないんだから。


「まあ、そういうけど、あくまでお客さんの荷物だからね」

 お兄ちゃんはそんなことを言いながら、荷物の外装を確認していた。

「中身は何なの?」

「いや、知らないけど。とにかく宅配便の漏れだって聞いてる。とは言っても、ほとんどはお店あての製品らしい。スポーツ用品店、自動車部品店、ドラッグストア、玩具店などのお店何件かや、いくつかの工場を回ることになってた。それから、個人宅を二件程」

「開けてみれば?」

「お預かりした荷物だからね。そうはいかないよ」

「届けられるかどうかもわからないのに?」

「うーん」

 お兄ちゃんが腕を組んだ。

「最悪、お店用は代品も可能だと思う。今頃、納品先や出荷先で大騒ぎになってると思うし、申し訳ないとは思うけど。電話も通じない現状ではどうしようもない。ただ、個人宅宛は代りもきかないだろうし、とにかく保管して、時間が経っても、できるだけ届けるようにしたいよね」


 荷物を一通り確認してから、お兄ちゃんが、グリシーヌが持ってきたお弁当を食べ始めた。


「おいしい?」

 オレはお兄ちゃんが食べるのを見ながら訊いた。

「あ、うん。ちょっと変わった味だけど」

 見た目はパンみたいなものと、豆と、葉野菜。

「何にせよ、食事を貰えるのはありがたいよ」


 それからオレ(スマホのカメラ)を見ながら付け加える。

「俺だけ食ってごめんね」

「あ、ううん」

 オレは(スマホの画面で)首を振った。

「オレ、お兄ちゃんが食べてる姿見てるのが幸せだから」


 キャハッ!

 オレ、お兄ちゃんの彼女みたい!

 朝ごはん作ってテーブルで頬杖ついてる、彼氏をじっと見てる感じで。


「それはそうと、フッフのご飯、つまりガソリンの方は、燃料の残量は多分30前後。携行缶で20リットル、ざっと50リットルか。厳しいね」


 雰囲気ぶち壊し。

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