19

戦いを重ねるに連れて、敵の弱点というものは自ずと明らかになってくるし、その弱点を第一に狙った形での攻撃方法が主流になってくる。これは当然のことだ。だけど僕は何故だろう。段々と定着していく戦法に、嫌気が差してきていた。手を変え品を変え技を変え。そこに加えて場所も時間も何もかも変わる。僕らの戦いはそういうもので、同じ敵は二度と出てこないし、戦う時間も場所も次元も、似通りはするけど、同じじゃない。だから結局戦法も変わる。はず。そのはずなのに、僕はどういうわけかこの戦いに、細かくは言い表せない共通点のようなものを感じ取っていた。弱点を探してそこを一点に叩く。そして極めて効率的に敵を倒す。僕が感じ取った共通点をギリギリ言語化できるとしたらこれが限度だ。この二点を中心に、敵を倒していくのだ。作業的で、機械的。次第にそう思うようになっていった僕は、いつの間にか日常というものを錯覚するようになっていった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る