再会

「お前笹川の足立だろー?5区の区間賞とった!俺、浅川の元永!4区の区間賞の!」


そう言って声をかけて来た男。顔見て一瞬でわかった。

自己紹介のときはあいつが印象すぎてわからんかったけど。


「知ってる、せんご(1500m)もはえーだろお前」


「わ、知ってくれてんの!?うれし!俺も陸上部希望なの!」


「そーなん?お前くらいやったら推薦きたっちゃないん?なんで一般なん?」


「水南、専願で受けたら落ちたわ」


水南は私立の陸上強豪校。

超進学校だから一般はすっげーむずい。

一般でここ受け直したらしい。


「はーい!今日は解散になりました!明日から普通に授業だから、遅刻しないよーに!部活はもう自由にまわっていーよ!んじゃ、かいさーん!」


担任の声で一斉に立ち上がる。


「足立くん!じゃなくて、駿介!部活!しょーかいしてよ!」


「いーよ、尚。」


「名前呼びやっほーぃ」


俺の前のドアから出て行こうとするひとつの影。


「樋口さんは、部活どこにするかきめたーん?」


もうクラスのムードメーカー的存在である女子に声をかけられて立ち止まった。


「あー、私、部活入らん気でおるとよー」


そうやって笑いながらいうあいつ。


「んあ!?おい!」


尚の呼びかけにも気づかず、本能のまま、ドアの前に立った。


「、、、何か??」


俺の方に振り向く。ショートボブの黒髪。

鞄に着いた花のキーホルダーが揺れる。


「樋口 風花。河東中、駅伝部エース。」


樋口が目を見開く。


「あ、やっぱ樋口さんちあの?俺、試合で何回か会ったわ!めっちゃ速いやな!」


「中3、途端に試合、でらんくなったよな。なんで?」


樋口は下を向く。


「あんな速くて、あんな才能あるのに、まさか辞めたとか言わんよn、、」


「やめて!!」


樋口の声に教室が凍る。


「才能とか、いらんかった、」


俺までにギリ聞こえるボリューム。

そして、樋口は顔を上げてこう言った。


「楽しくないやん。長距離とか特に。苦しいだけやん?だって高校生ばい?めっちゃ遊びたいし、めっちゃ食べたいやん?ただそれだけやけ。」


「、はぁ?」


「あ〝ーーっと、とりあえず 待っとるけ樋口さん!いつでも陸上部おいで!一緒に走ろーや!」


尚に押さえつけやれ(物理的に)喧嘩にならず済んだ。


「勝って楽しくねーとか、何様だよ。」


俺の声は誰にも届かなかった。


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