count.7 関係ない

やってしまった。


腕の中で山積みにされたトイレットペーパー。


これを西校舎まで運ばなきゃいけないのに


下が良く見えなくて階段を踏み外したら


腕から紙たちが逃げて行ってしまった。


手間を省くためか包み紙は全て剥されていて、


今はそれが仇となり、


紙は尾を伸ばしながら四方へと落ちてゆく。


周りは冷たい視線をくれるだけ。


手伝おうなんざこれっぽっちも思っちゃいないんだろう。



……カッコわる。



だが私は、もっとマズい状況に気付いてしまった。


紙が向かった先には、


確か同じクラスだけど、


所謂不良で滅多に登校しない人が立っていたのだ。



うわ、当たる。


どうしよう。



しかし彼は意外にも、転がる紙束をヒョイヒョイと拾っていってくれた。



「コレ、アンタ一人で?」



更に驚きなことに、なんとこちらに声を掛けてきた。



「……うん」



当然だ。


コレは私への罰ゲーム。


永遠に私が勝者になることは無い、暇つぶしの彼女たちの余興。



「貴方も、私に関わってるとやらされるよ」


「……関係ねぇな」


「……え?」


「俺はあんま学校来ねぇかんな。アンタがどんな奴かなんて噂、知らねぇし」



……ふーん。


変な人。



『関係ない』

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