第56話 小見出しを使おう!


 現在連載中の『ときめき☆ハルマゲドン』なんですが、主人公が2人います。一種バディー物みたいなお話なんです。


 主人公が2人いるので、せっかくだから2人のそれぞれの視点からの描写を入れたくなったんです。その方が、ほら、表現の幅も広がるし、面白い描写もできるかもしれない。


 でも、主人公2人の視点で交互に描かれた場合、読者が混同するかもしれない……。

 一人称であれ三人称であれ、視点キャラクターが変わる場合、読者が混乱することが多々ありますね。つーか、混乱します。





 よく人称の固定とか、カメラ視点を意識しろとかいいますね、小説の書き方で。


 小説であれ論文であれ、おおよそ文章というものは、何者かが読者へ、すなわちあなたに語り掛ける形態をとっています。その何者かが作者ですね。


 視覚ではないんです。聴覚なんです。文字は目から入ってくるけど、音なんです。



 家電製品の取扱説明書で、「危険ですので、絶対にしないでください」と書いてあった場合、それはメーカーがユーザーであるあなたに語った内容です。そして基本語っている張本人は、その文章を書いた人であります。



 それは小説も同じでしょう。


 小説では、作者が読者に物語を語って聞かせています。一人称の小説では、作者=主人公です。基本作者自身が体験したことという体で、嘘の物語が描かれています。


 これが三人称小説だと、作者=主人公ではないですね。作者は主人公から聞いた話、あるいは主人公の行動をそばで見ていて、それを語っています。



 という経緯なので、途中でいきなりあなたに語り掛けている人が変わったりしたら、読者はびっくりします。



「危険なので絶対にしないでください。この商品を買って、とても良かったです」


 こんな感じで、メーカーからの注意書きのあとに、いきなりユーザーの感想が入ってきたら、「?」となりますね。


 なので、人称だの視点だのの固定ということが言われるのです。



「危険なので絶対にしないでください。以上を守って使用されたお客様からは、『この商品を買って、とても良かったです』とお褒めの言葉をいただいております」


 メーカー一人に言わせてみました。


 また、読者に、語っている人が変わりました、というサインを出せば、べつに問題ないです。


「危険なので絶対にしないでください。<お客様の声>この商品を買って、とても良かったです」




 文中の流れの中で、語り手を変えるのは、難しいです。基本不可能だと思った方がいいです。

 そこで、章を変えたり、段落を変えたりして、なおかつそのタイミングで語り手が変わったことを示してあげるくらいのことをしてあげます。これは一行目でやる必要があります。途中で変えられないから当たり前ですが。


 翌朝目覚めたとき、市川雷美は身体中が痛くて思わずうめいてしまった。


 これはぼくの『刀剣オカルトMØDE』のあるエピソードの書き出しです。この前のエピソードでは、視点は萬屋錦之丞になっているため、一行目に市川雷美の名前を入れています。


 基本こういうことをやりますね。でも、ふと思ったんです。カクヨムには「小見出し」という機能があります。『ときめき☆ハルマゲドン』では、これを使おう!と思ったんですよ、ぼくは!


 小見出しなら、各話のタイトルの上に「──ここから突然文字ラジオ──」みたいな宣伝(?)を入れることが出来ます。

 でも、──ヒチコック視点──とか入れるの、無粋じゃないですか。そこで文章を入れました。──ヒチコック、異世界の扉を開く──みたいな。


 これ、単語ではなく短文にしたのは、短すぎると読者は無視するからです。


 たとえば、カクヨム画面の一番上の「前のエピソード……」とか、一番下の「★で称える……」とか、みなさん読みますか? 読みませんね。絶対無視してます。


 いつもある文章、また凄く短い文章は無視されます。が、ある程度長いと読む。でも、理解はしない。

 それでいいんです。ぼくが読ませたい、いいえ見せたいのは「ヒチコック」の文字だけなんです。

 読むともなく読み飛ばした読者が、サブリミナル効果でこの文字が頭のなかに残っていてくれればいい。ぼくはこの技法を「サブリミナル」と呼んでいます。基本は文中で使用する小技です。


 たとえば小説の書き出し。



           ★★★


 あたしは夜露に濡れた芝生を、学校指定の革靴で踏みつけながら、どかどかと進んだ。



           ★★★


 この一文で、主人公が女子で、学生で、いまが夜であることが、はっきり書かれていないがなんとなく感じられます。

 他にも「去年の誕生日に買ってもらった原付バイク」とか「休みの日に新宿で買った竹刀袋」など、いちいち書かなくてもキャラクターのディティールを解説できます。そしてそこに動作や感情を乗せれば、いちいち「十七歳で東京に住んでいて剣道部で気が強くて行動的でちょっとがさつな性格」なんて解説はしなくてすむうえ、物語も進められます。



 ま、サブリミナル技法の解説はこれくらいにして。




 小見出しの使用法なんですが、さらに思い付いたんですよ。


 『ときめき☆ハルマゲドン』では、各章ごとに話のイメージがちがう。バトル専門の回もあれば、バトル自体ない回(←まだ書いてないけど)もあります。

 で、章ごとにタグを付けて、小見出しに追加しておけば親切かな?と考えたわけです。



 が、これがうまくいかない。文字の間隔があわなくて、変なところで改行が入るし、センタリングも入っているし。


 ──now loading   <ギャグ><格闘&銃撃>──


 と入れたいんですが、実際には、


 ──now loading   <ギ

           ャグ><格闘&銃撃>──


 みたいになっちゃって。


 仕方なく、大見出しで章タイトルのあとにつけてみたんです。


『第1章 はじまりの村のオウガバトル 章別タグ<ギャグ><格闘&銃撃>』


 みたいに。でっかい文字で。


 いいんですけど、なんか大仰だなぁ、と……。

 なかなか上手くいかないんです。


 で、1日だけ試してやめました。章別タグ。


 理由はですね、第3章のタイトルとタグなんですが……。



『第3章 ヴァンパイア・ハンターたちのダイハード・ナイト  章別タグ<ヴァンパイア・ハンター><ダイハード>』





 ……これ、意味なくない?





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