第92話 北海道か東京か
大阪に着くと、トラタ共和国のボランティア仲間からのメールで、ドイツへの招待を素直に受けたらいいと勧められて、渚沙はドイツ行きを一度検討した。
すると直後に、ナータからのメッセージが届いた。ボランティア仲間のドイツ人に「ナギサは実家に行けばいいではないか」といったそうだ。つまり北海道に戻ることになるけれど、それで本当にいいのか……。安全な場所に違いないが、それでは何の役にも立てない気がする。
渚沙は必要性を感じず、震災後、トラタ共和国のナータの寺院には自分から何も連絡していなかった。五日後に初めてドイツ人のボランティア仲間から連絡があったのだ。ナータがすべてを知っていることは、渚沙にはよくわかっていたし、今回はナータ本人が意図的に渚沙を日本へ送ったのだから。多くの人も聞いていた。重要な理由があるのは間違いない。
渚沙は結局、当初の計画を変えないことにした。三月二十二日に東京に戻って医者一家のお宅に世話になり、
それにしてもナータ、人使いが荒くないかしら……。生き神に仕えるのは楽じゃないのは経験済みだけれど、仮にも私はナータの婚約者のはず。普通、婚約者にこんな重い仕事は与えないでしょう。シャンタムもシャンタムよ。ボランティアセンターであんなドラマに参加させるんだから。あの二人、絶対中身は一緒だわ。
そりゃ、昔は平凡な人生は絶対に嫌だと思ってた。あまりにも平凡な未来が見える達也との結婚は死ぬほど嫌だったし。だからってこれほどまでに非凡な人生を送りたいと望んだことはない。しかも、生き神に仕えたいとか考えていなかったし。だいたいにして私は無神論者だったのに。
それもこれも願望のせいか……。覚えてもいない大昔の、いつかの時代の前世で望んだことなんだろう。まったく、昔の私め。
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