番外編#クマとシカが湖にやって来た!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
パァーーーーーン!!
パァーーーーーン!!
パァーーーーーン!!
パァーーーーーン!!
パァーーーーーン!!
「ひいいいいいいいっ!!」
パァーーーーン!
「あひゃあ!!」
「ガチョウのブンちゃん。自ら嘴で膨らませ割って仰天するとか、相変わらずの『リアクション鳥』だよな。君は!!」
ぷおおおおおおおお~~~~~~~~~!!
ぷおおおおおおおお~~~~~~~~~~~!!
「女王様!!うしろ!!うしろ!!」
ハクチョウの女王様は不思議の湖で、帰郷してまた戻る息子のブルンガ大王とお供の『能力鳥』と一緒に、絆を確かめる為に『儀式』の風船膨らまし割りをしていた、その時・・・
アヒルのピッピは、後で強大な気配を感じて、あわてふためいた。
ぷおおおおおおおお~~~~~~~~~!!
ぷおおおおおおおお~~~~~~~~~~~!!
「女王様!!後で白い巨大風船と黄色い巨大風船が!!」
鳥達は、どんどん膨らむ2つの巨大風船にがーがーぎゃーぎゃーと取り乱した。
ぷおおおおおおおお~~~~~~~~~!!
ぷおおおおおおおお~~~~~~~~~~~!!
ハクチョウの女王様と王様は、膨らんでいく巨大風船の中から聞こえてくる息遣いに興奮した。
「やあ、クマさん。シカさん。『儀式』にようこそ。」
「えっ?!」「ケモノ?!」
「ケモノが鳥の楽園に?!」
鳥達は、騒然とした。
「膨らむ巨大風船がだいぶ薄くなったみたい。
もうすぐ割れるわよ!!衝撃に備えて!!」
鳥達は、皆翼で耳の孔を塞いだ。
バァーーーーーーーーーン!!
バァーーーーーーーーーン!!
獣臭い吐息が、割れた巨大風船から飛び出してきた。
「白いクマだーーー!!」
「4本角のシカだーーーー!!」
『儀式』の鳥達の畏怖をよそに、ハクチョウの女王様と王様は、白い割れた巨大風船を持っている白いヒグマと黄色い割れた巨大風船を持っている4本角のニホンジカをエスコートした。
「皆ー!!怖がらなくてもいいのよ。」
「食べないでーー!!」「食べないよーー!!」
「ほんと?」「当たり前でしょ?俺らも『愛の仲間』さ。」
「え?」
鳥達は、一瞬硬直した。
「始めましてーー。俺は白いヒグマ。」
「始めましてーー。俺は4角のニホンジカ。」
2頭のケモノは、膨らませたてのゴム風船のように艶々した鼻をヒクヒクさせて優しくニッコリと微笑んだ。
「実はね。この獣達は遥か向こうの人間の廃校を『魔改造』して作った、『風船と逝けし獣の世界』で、『あの世』と『この世』の私設中継地点の創始者なの。
ここから異世界へ新たな転生に行くか、または生まれ変わるかは、この獣の生前の行ないを神が選択するし、行いが良ければ自ら選択も出来るのよ。
人間に殺された獣の『もっと生きてたかった』の無念を癒す為に、風船を使って愉しい気分で笑って新たな転生を迎えればな・・・と想いが込められてる施設・・・
そう、ブルンガ大王さん!!あんたの『バードランド』と同じ趣旨のケモノバージョンの代表よ!!
逢いたかったんでしょ?」
「ん・・・まあ。始め・・・まして・・・お、俺は貴方の『風船と逝けし獣の世界』の鳥版の『バードランド』の創始者の・・・ハクチョウのブルンガです・・・」
「俺俺!!!俺が『物質変換』能力持ちのトビの『バーグ』だ。」
「あ、はじめまして!!私はアカショウビンの『ピル』と、」「カワセミの『タック』です!!お互い『破砕能力』持ってまーす!!」
「そして、わたくしめがマガモの『リヤン』。『沼地造成』能力持ちだ!」
「そして僕がトキのモモ。『時間操り』を使上手い」
「おお!!ふむふむ。」
「で。この 4羽の『凄い鳥』がどんな工事をやったんだい?」
白ヒグマのパァンと4本角シカのノバは、興味深く『能力鳥』を眺めた。
「アカショウビンのピルカワセミのタックは、観覧車やメリーゴーランドといった錆び付いた施設を『破砕能力』で次々と、ミサイルの如く突っ込んで破壊して、次々と粉々な鉄屑にしていった。」
「ほう、それで?」
「トビのバーグは『物質変換』能力で、鉄屑と化した施設を鬱蒼とした緑豊かな山林に、ひび割れた地面を草原にそして水の無い大型プールを湖に、変換していった。」
「はいはい。」
「マガモのリヤンは、トビのバーグが造ってくれた元プールの湖の岸辺を『沼地造成』の能力で、1面の広大な干潟にした。」
「なるほどぉ!!」
「俺らあっての『バードランド』だよー?!」
4羽の『能力鳥』達は、異口同音に言って胸を張った。
ブルンガ大王はそれを見て、翼で『サムグッド』のジェスチャーをした。
「『バードランド』を作ったのは、俺だけでなく、あの『能力持ち』の鳥達の縁の下の力持ちが居たからです。
お逢いできてこ・・・」
白いクマが、大きな鼻の孔をハクチョウのブルンガ大王の顔に近づけて、「ふーーーーーっ!!」とケモノの臭いの鼻息吹いたとたん、話の途中で硬直してしまった。
「こ・・・光栄です・・・」
「そして、その『能力鳥』や、この2頭のケモノに『魔術』の修行をさせたのが、このハクチョウの女王様なんだ。」
「ええええええええええ!!!鳥だけでなく、ケモノまで『魔術』を与えてたの?!」
「凄いというか・・・尊敬するわ!!女王様!!」
鳥達は、ハクチョウの女王様の偉大さに感嘆した。
「あたいが呼んだのよ。一緒に『儀式』したかったんだけど。
飛んでワープ出来る私達『鳥』と違って、山を越えて谷を越えて川を越えてノッシノッシと来たんだから、遅刻しちゃったけどね。」
ひゅん。
ぷぅ~~~~~~~!!
「あ!」
「あいつはー!!」
また湖に、ケモノが侵入してきた。
「すいません!!すいません!!すいません!!すいません!!すいません!!すいません!!すいません!!
クマとシカに仰天して気絶した隙に!!天敵をみすみす!!
すいません!!すいません!!すいません!!すいません!!すいません!!すいません!!」
血相を変えて、ガチョウのブンが慌ててやって来た。
「ガチョウのブン!!セキュリティ係なのに、何でキツネが!!」
「けっ、決壊が!!破られた!!」
ガチョウのブンは、頭を抱えて踞ってしまった。
「すいません!!すいません!!すいません!!すいません!!すいません!!すいません!!すいません!!すいません!!すいません!!すいません!!」
「謝って済む問題じゃねーんだよ!!」
「御免で済んだら保健所は要らねえんだよ!!」
「ガチョウ!!お前は当分飯抜きだならな!!」
「詫びろよガチョウ!!」
湖の鳥達が、涙目のガチョウのブンを責め立てている時、更に悲劇がブンを襲った。
パァーーーーーーーーーン!!
「ぎゃああああああああああああああああああああ!!キツネの風船が割れた!!キツネの風船が割れた!!」
「うるせぇんだよ!!ガチョウ!!」
「キツネに喰われろガチョウ!!」
「皆!!しゃらっぷ!!」
ハクチョウの女王様は、取り乱すガチョウのブンを追い詰めている湖の鳥達に怒鳴った。
「お、俺・・・別にここを襲いに来たんじゃねぇし。
こいつらが来るんで、一緒に『儀式』したかったんだけど・・・どうしても湖のガードが厳重で・・・」
キツネは、辿々しく事情を話しているとこに、割れた巨大風船を振り回しながら、白いヒグマがキツネの側へ笑いながらやって来た。
「やあ!!『ネッケ』!!つーか、『ネッケ』の生まれ変り!!」
「あ!!白ヒグマの『パァン』様!!そして4本角の『ノバ』様!!逢いたかったです!!
まさかこんなとこで再開出来るなんて!!光栄です!!」
『生まれ変り』キツネのネッケは、白ヒグマのパァンの懐に顔を埋めるとおいおいと泣きじゃくった。
「ハクチョウの女王様、そしてその息子の同業者『バードランド』の支配者のブルンガさん。
このキツネは、前世に交通事故で死んだんです。
で、死んでこの俺と4本角のノバが君臨している『風船と逝けし獣の世界』にやって来て・・・
選んだ転生先は、再び野生の『キツネ』だというので・・・まさか、この女王様の支配しているこの不思議の湖の側の森に住んでいたとは・・・
奇遇で偶然で。」
「このキツネさんは、前世でノウサギを追いかけたら、高速道路で車に轢かれて・・・そんでもって、ここ交通事故のせいで、高速道路で人間の死傷者を出して大惨事を起こした事の自責の念で気が病んでたみたいで・・・ぶっ!!」
「こら!!ノバ!!こよキツネの前世をしゃべるんじゃねえよ!!」
白ヒグマのパァンは、慌てて4本角シカのノバの口を抑えるとキツネのネッケを抱き上げて、こう言い聞かせた。
「ごめんなキツネのネッケ、この鳥達とライバル同士、仲良くしろよ。」
「大丈夫だよ。俺、前世の事は『風船と逝けし獣の世界』ですっかり癒せたから・・・」
キツネのネッケは、俯いてボソッと呟いた。
「忘れたい事思い出させる事言ってすまんね、キツネさん。」
4本角のノバは、キツネのネッケに言った。
キツネのネッケは深く息を吸うと、こう言い放った。
「まだ俺はやり直せるんだよね!もう一度生きている限りね。
だから、俺は再び『キツネ』として生まれ変わってから前世より狡猾に生きることにした!!
だ・か・ら!!」
キツネのネッケは、辺りを見渡した。
「ここの湖の鳥を・・・」
その瞬間、湖の鳥達がキツネのネッケへの不穏な視線を投げ掛けているのに気付き、ネッケはギクッとなった。
「き、今日は襲わないよ!!」
「本当っすか?」
ガチョウのブンは、不信そうにキツネのネッケを睨んだ。
「ブン!!キツネがそう言ってるんだから、今日は休戦だよ。あくまで休戦ねー!!」
ハクチョウの女王様は、ニッコリと微笑んだ。
「女王様、俺らがここに来たのはこの同業の『バードランド』を造った女王様の息子の逢いたかった事。もうひとつの理由は・・・申しにくいことだけど・・・」
白ヒグマのパァンは、屈んでキツネのネッケに視線を合わせてこう言った。
「君をスカウトしに来た。」
「えっ・・・?!」
「もうすぐ冬が来る。俺はクマだから、冬眠しなければならない。
そしたら、『風船と逝けし獣の世界』は4本角のノバさんだけで遣り繰りしなければならない。
だから・・・」
「俺?」
キツネのノバは、深く考えた。
「いえーーーーい!!キツネ行っちゃえ!!」
「ガチョウのブン!!いい加減にしなさい!!」
大はしゃぎするガチョウのブンに、ハクチョウの女王様は一喝した。
「冬の間だけだよね・・・でも、俺らキツネは冬は『恋』の季節だし・・・」
キツネのネッケはふと思った。
生まれてこの方、雌ギツネにありつけない身の上を・・・
「解った!!」
「そっかー!!承諾するんだ!!」
白ヒグマのパァンは、キツネのネッケを抱き締めた。
「その代わり・・・」
またキツネのネッケは、辺りを見渡した。
「食べないでーーー!!」
ガチョウのブンは、ブルブル震えた。
ボカッ!!
「今さっき休戦と言っただろ?!」
マガモのマガークは、翼でガチョウのブンの頭を叩いた。
「皆で一緒にやりたいんだ。『儀式』とやらを。」
「ええっ!?ケモノと儀式?!」
他の鳥達は、この事にざわついた。
「いいわよーー!!ケモノも鳥も、『愛の仲間達』!!マイノリティは、仲良く生きる為には必要よ!!
今からあたし!皆にゴム風船を用意てあげるわよ!!」
ハクチョウの女王様と王子様。そしてアヒルのピッピは、いろんな色のゴム風船を持ってきて、皆に配った。
「じゃあ、準備はいい?」
白ヒグマのパァンと4本角のノバは、巨大なゴム風船。
キツネのネッケは、鳥達より一回り大きめのゴム風船が用意された。
「じゃあ、息を深く吸って、吸って、吸ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーー!!!
せぇーーーーーーーのぉっ!!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
鳥達も、ケモノ達も、
ゴム風船に息を吹き込む度に、
ゴム風船を大きく膨らます度に、
お互いの『絆』が深まっていく。
共に生きていく喜びが膨らんでいく・・・
生きていく喜びを膨らませている・・・
今、鳥とケモノ達は、
共に、生きていく喜びを膨らませている・・・
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーーっ!!
パァーーーーーーーーーン!!
パァーーーーーーーーーン!!
パァーーーーーーーーーン!!
パァーーーーーーーーーン!!
「ぎゃあああーーーーーー!!キツネの風船が物凄い爆発したーーーー!!!」
「何いってるんだガチョウ!!」
「全く・・・ガチョウのブンは、風船の割れる音が苦手だなあ。」
・・・・・・
湖から3頭のケモノが湖から去って、やがて冬がきた。
この湖にも氷が張り、雪が降った。
・・・鳥達、この冬越せるかしら・・・
・・・狩猟や鳥インフルエンザ・・・
・・・哀れな鳥たちにまた癒しの風船が要りようだわね・・・
「はい、風船」
「あっ。こんなに?!丁度、風船が要りようだと思ったわ?
・・・え?」
その沢山の萎んだカラフルなゴム風船を渡した身体を雪だらけの鳥は、女王様には見覚えのある鳥だった。
「あなたは・・・」
その鳥は身体の雪を身震いさせて払いのけると、中から立派な頭の羽根飾りと派手な尾羽が現れた。
ハクチョウの女王の嘴から、白銀の地面に渡された風船をぱらぱらと落とした。
「女王様ー!!久しぶり!!クジャクのジャニスどぇす!!」
~ハクチョウの女王様とクジャクと風船~番外編~
~fin~
ハクチョウの女王様とクジャクと風船 アほリ @ahori1970
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