『鉄錆びの女王機兵』書籍化、おめでとうございます。
この作品は流行とランキングプラットフォームに合わせて整えられたテンプレではない。
四肢欠損、接続されるチューブ。履帯という脚、装甲という皮膚、砲塔という腕。主砲という、あまりにも巨大な殺意。そんな尖り切った作品が八年後、市場の方から見つけに来たのだった。
軍事オタクの豚として、これほど背徳的に美しい兵器はない。
戦車とは、本来、人間の弱さを隠すための箱である。柔らかな肉を装甲で包み、短い腕を砲身で延ばし、疲れる脚を履帯へ交換する。人間は戦車に乗ることで、自分より遠くを撃ち、自分より重いものを踏み潰す。
だがカーディルの場合、その比喩が比喩ではない。
彼女が前進するたび、履帯が大地踏み、彼女が敵を睨むと砲塔が旋回する。彼女が生きたいと願うと、徹甲弾が発射される。
戦車は彼女の自由の象徴であり、同時に二度と降りられない玉座でもある。
義肢を装着する場面では、相方ディアスに触れてもらわなければ、自分の身体を完成できない。
四肢を失った少女を、ただ「守られる身体」にしない。その依存と信頼が、どんな裸よりも無防備なのである。介助とも整備とも愛撫とも呼び切れない手つき。ドスケベを通り抜けて、エロスである。
抱擁とは本来、腕がある者の行為だ。しかし本作では、腕を失ったからこそ、抱き締めるという行為がとても重い。
そして戦いながら、高性能な義肢で人として戻っていく姿が最高に切ない。
だが、愛する男を抱き寄せることのできない身体であれば、敵には徹甲弾を叩き込める。
この不均衡こそが、カーディルの色気であり、悲しさであり、女王機兵という存在の完成度だ。
兵器の強さとは、どれだけ破壊できるかではない。破壊したあとも、守りたかった人間が人間として残っているかで決まる。
カーディルは戦車として恐ろしく強い。
だが本作の価値は、彼女が戦車という兵器になっても、兵器の陥る罠に最後まで抵抗したことにある。愛するものを守るため兵器として暴力振るう。
暴力を振るったあと、それでも愛する者のもとへ帰ろうとした瞬間、兵器が人間へ戻る。
戦車という、「相手を殺すための百パーセント敵意で作られた暴力」が、四肢なき女の身体となったとき、四肢なき女は、その暴力で愛する男を抱く。
こんなに鉄臭く、油臭く、血生臭く、そして艶めかしいラブストーリーが、再び世へ出た。
長く荒野を走り続けてきた女王機兵。ディアスとカーディルの物語に市場が八年かけてようやくおいついた。
第1話冒頭の主人公・カーディルの描写に圧倒された。
四肢を失い、チューブで戦車と完全に一体化した女性が戦車そのものを意のままに動かして戦う——この設定のビジュアルインパクトが凄まじい。ゴーグルで視界を確保し、思考で戦車を操る彼女の存在は、荒廃した世界における「人間と機械の融合」を体現している。
文体が重厚でリズムがあり、砂漠の荒野を疾走する戦車の描写から始まる冒頭は映像的な引力を持っている。「逃げるつもりはない、血よりも濃い朱の目がそう語っていた」というミュータントの描写も、敵側の存在感を高める優れた表現だ。
砲手ディアスとの短い会話のやり取りだけで、二人の長年の信頼関係と戦場での呼吸が伝わってくる。
暴走したDNAを持つミュータントが跋扈する荒廃世界を、戦車と化した女が生き抜く——こんな独創的なハードボイルドSFを他では読めない。完結済みなのも嬉しい。
荒野に押し寄せるミュータントの群れ。
救出に向かう少年の前に、四肢を失った少女が横たわる。
なんともゾクゾクするような風景ですが、これは始まりに過ぎません。
彼らは、銃を手に、戦車を手足のように操って、強くなっていく。
絶望と不安に彩られていた2人の関係も、次第に強固な絆となり、
ふと気づくと、濃厚いちゃラブ度もうなぎ登り。
でもそこで、( ̄ー ̄)ニヤリ と笑って、満足しないで!
中盤から、世界の荒廃と化け物たちの由来が、明らかになり、
多彩でおちゃらけたサブキャラたちが、それぞれの道を歩き出し、
一つの大きなうねりとなって、結末へとなだれ込みます。
戦闘シーンも、冒険も、仲間も、謎解きも、みな楽しいけれど、
一つの愛の形として、この物語を、見届けてほしい。
こんなに魅力的な物語が読めるとは思ってなかった。
荒廃した世界の片隅で、絶望的な状況に愛だけをささえに抗う二人の物語。
そうそう!こういうのが読みたかった!!
文明崩壊後の荒廃した世界って、こういうのだよね。
すべての希望を失い、死を待つしかない状況から、互いへの愛だけで支えあう二人が、やがて絶望を打ち破り、皆に希望をもたらす。そのエンディングが素晴らしい!!これな幸福に満ちたエンドはないでしょう。
主役2人の愛と献身のストーリーの脇で、歪んでしまった愛と希望、喪失と克服の物語、などの様々な人間関係が描かれ、ストーリーに惹きつけられ続ける。
世紀末SFすきなら、是非読んでほしい。