ー6ー

 これに驚いた中林は一瞬体を引き剥がそうとしたが、人の体温に安心したのかすぐに動きが止まる。

「波那ちゃん?」

「もしかして、普段からあまり眠れてないんじゃないの?」

 波那は中林の体をさすると、戸惑いながらも少しずつ身を委ねてくる。

「何で? たまたまだよ」

「だって僕が眠るのを見計らってこの部屋で夜を明かしてるじゃない」

 図星を指摘された中林は表情を変え、再び体を引き剥がそうとしたが、波那は抵抗して更に強く抱き締める。

「変な詮索、すんじゃねぇ」

「ごめんなさい。でも好きな人と一所にいたいと思うのがそんなにおかしなこと?」

「そうは言ってない、俺だってそう思ってんだ。けど好きな人に変な気揉ませたくないって思うことだってあるだろ?」

 確かにその通りかも知れない……波那はほんの少しのワガママが傲慢に感じられてふっと力を緩める。中林が離れていく覚悟はしていたのだが、波那の体に身を預けたまま動こうとしなかった。

 波那は再び恋人の体を抱き締めてそっと頭を撫でると、何かにすがるかの様に小さな体を抱き締め返してきた。

「本当はガキの頃からまともな睡眠なんて取れた試し無いよ。精神科に通って睡眠薬を処方してもらってた時期もあったんだ」

 中林は波那の胸に顔をうずめ、ポツリポツリと話し始める。

「大抵は施設にいた頃の夢でうなされる。それで夜中に目が覚めて、夢の続きを見るのが嫌で眠れなくなる。別の施設に移ったばかりの頃は貫徹する日が何日も続いて、医者に勧められて睡眠薬に頼るようになったんだ」

 波那は彼の話を聞きながら、持ってきていた毛布をそっと掛けて背中をさする。中林の体は冷たく時折カタカタ震えていたのだが、体を寄せ合っているうちに少しずつ温かくなって震えも治まってきた。

「睡眠薬は確かに効果あったけど、それに頼りすぎて一度死にかけたことがあって……」

 それ以来怖くて服用を止めた……中林は少し安心したように目を閉じる。

「それでも睡眠欲はあるから一旦は眠れても途中でうなされて目を覚ます。未だにそれを繰り返してるから、相手に心配掛けて同じ様な睡眠を強いるのが嫌でさ。総さんから波那ちゃんは体が弱いことは聞かされてたし、体に障るようなことしたくなかったんだ」

「そっか、眠れないのは辛いよね」

 子供の頃の波那は、いつまで生きられるか分からない状況の中での入院生活を強いられていたので、目を閉じるとこのまま死んでしまうのでは、という恐怖に苛まれて夜を迎えるのが怖かった時期があった。状況は違えど睡眠に対する恐怖と戦っている中林の辛さは彼にも理解できた。

 こういう時は母が必ず傍にいてくれた、息子が熟睡するまで。一人でいるとろくなことを考えない、身を以て体験している波那は、今日こそ朝まで一緒に過ごしたい……と恋人を抱き締めている腕に力を込めた。

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