第32話 ゴールデンウイーク初日

 良い天気だ。雲一つない青空が広がっていた。ゴールデンウイーク初日、僕は学園の近所にあるコンビニで待ち合わせをしていた。まだ、5月だというのに、汗ばむくらいには暑い。僕はコンビニでスポーツドリンクを購入し、入口前で飲んでいた。


「オッス! 待たせたな!」


陽気な挨拶を受けた。待ち合わせしていた相手、シンヤだ。

「十分遅れだよ?」

「悪い、悪い。ま、この前の勉強会の時、シュウもギリギリだっただろ? これでおあいこな!」

 僕は遅刻してないぞ。遅刻と、ギリギリセーフは天地の差があるはずだ。しかし、シンヤの悪気のなさそうなにやけた顔を見たら、どうでもよくなった。それよりもシンヤの服装が気になった。シンヤはいつも通りの不良ファッションをしている。だが、気になったのはそこではない。


「それにしても、こんなに気温が高いのに長袖なんて良く着れるね? おまけに手袋まで……熱くないの?」

「お、よく気付いたな! 実はこの服装も面白いもんに関係しているんだぜ」


 そう、今日はシンヤが度々口にしていた面白いもんを初めて見せてもらうのだ。どんなものかは全く何も聞いていない。シンヤが驚かそうと隠しているように見えたし、僕もシンヤの家に行く時まで聞かずに楽しみにしておこう、と思っていたからだ。長袖、手袋にも関係するものみたいだけど、一体何なんだろう? 

「そんじゃ、早速オレんちに案内してやるよ」

 シンヤはそう言うと、親指を立てこっちだ、とジェスチャーしてから歩き出した。


「そういや、シュウお前実家には帰らねえの?」

「うん、ゴールデンウイークは帰らないつもりだよ。親にもそう伝えた」

「俺と一緒だな。帰っても親がめんどくせえもんな!」


 いや、別にめんどくさいとかそんなんではない。勉強するためだ、と説明しようかと思ったが、やめた。結局、シンヤと赤崎さんと一緒に行った勉強会以降も講義について理解できていないことを認めるのがなんとなく悔しかったからだ。だから、適当にシンヤの言葉に相槌を打った。我ながらちっぽけなプライドだ。


「レオナのやつ、おふくろに金髪のこと言ったりしてねえだろうな?」


 どうやら、赤崎さんは実家に帰っているようだ。


「言ってるんじゃない? 赤崎さんの性格的に」

「だよなあ……帰るのがより面倒になってくるぜ」

「そう言えば、赤崎さんとシンヤの実家ってそんなに近いの?」

「ああ、ホントに目と鼻の先ってやつだぜ。あいつんちメッチャでけえんだぜ?」

「なんか実家は名家だって聞いたことがあるよ」

「そうなんだよ、ありゃ代々悪いことをしてるに違いねえ」


 どんな固定概念だよ、そんなことを話しながら大通り沿いを歩いていると、シンヤが急に体の向きを変えた。


「ここ、通ると近道なんだぜ」


 そこはビルとビルの間の細い路地だった。


「ここ通るの? なんか嫌な雰囲気だなあ」

「何、女みたいなこと言ってんだよ! ほらさっさと行こうぜ」


 シンヤが歩き出したので、仕方なく路地裏に入った。なんか気乗りしないなあ。この路地、気味が悪い……。

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