ジュリウス・セピールの回想
序
初夏の日差しが肌に突き刺さる。一応は鍛えてはいるが、基本研究室に籠もっている身としては耐え難いものだった。
木陰の下を通り、日差しをやり過ごす。
夏は苦手だ。外で読書をしても、本が眩しくて読めたものではない。顔が赤くなるのはいいが、肌がヒリヒリして痛くなる。蝉の鳴き声も煩わしい上に、気温が高いと気分が悪くなる。
四季にはそれぞれの役割がある。それは理解していても、夏という季節を好きになれなかったし、必要性を感じなかった。
ただ、そんな夏でも一つだけ好きなところがあった。
夏は彼女が輝く季節だ。
彼女はいつも輝いているが、夏だと一層輝く。眩い青空の下で走り回り、満面の笑顔を浮かべている彼女はまるで子供のようで、無邪気な姿はこちらも嬉しくなる。
嬉しい。そのような感情は、彼女と出会うまではなかった。
嫌いかそうではないか。面倒くさいか否か。あの頃のジュリウスはそれが判断基準であり、それ以外の感情はほぼ無かったに等しい。
(それにしても、クロニカの反応……予想通りというかなんていうか)
先程の彼女の顔を思い出す。
告白をした。どれだけ彼女が好きかを伝え、諦める気はないと宣言した。
青天の霹靂。まさにそんな顔をしていた。
だが、彼女は気付いているだろうか。
その顔がほんのり赤みを帯びていたことに。いつもの彼女なら、冗談だろう、とまず笑い飛ばすことを。
彼女は自分のことを好いてくれている。それが友としてか、異性としてか。そこは曖昧なところだろう。
結果は上々だ。さて、次はどう攻めようか。
苦手は日差しの下で、ジュリウスは上機嫌で道を歩く。
咥内に残っている桃の風味が、さらにジュリウスを上機嫌にさせた。
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