六章八話
「萌子。萌子……!」
侑里はうなされている様子で、萌子の名前を何度も呼ぶ。
「ユリ!私はここだよ。大丈夫、私がついてるからね」
「萌子、流石に盗撮はキモいと思うよ、私」
萌子の体が硬直した。よく見れば、侑里はまだ目を覚ました様子はない。だがなんにせよ、『森の意志』は良からぬことをしているらしいという結論を出した。
「待って。早まらないで、萌子。分かった、ユリを解放するから」
言いながら、『森の意志』は侑里から離れる。するとすぐに、侑里は目を覚ました。起き上がりながら目をこすり、萌子の姿を認めて言う。
「良かった、萌子。今度はしっかり本物ね。……うん、桃ちゃんもちゃんといる」
頷いて、確認するように言う侑里に、萌子がだきつく。
「ユリ!良かった。心配したんだよ?そいつにだきつかれた瞬間にいきなり倒れて。目を覚まさないし変なことは言うし」
だきしめて離そうとしない萌子に、少しバツが悪い顔をしながら、侑里が笑いかける。
「大丈夫。私、こんな見た目だけど見かけよりずっと心も体も丈夫なんだから」
「バカ……!」
その様子を見ていた『森の意志』はこほん、と咳払いを一つした。
「……さて、侑里。まだ話の続きだったと思うのだが、続けていいかな?それに、桃。いくら私が神と呼ばれる類の者だとは言っても、少々警戒し過ぎではないかな?」
ずっと黙っていた桃は、緊張した様子で答える。
「その妖怪のような見た目では、あなたを神様だと認めるわけにはいきません。どこからどう見ても
桃がそう言った次の瞬間には、桜の葉と枝でできた化け物は姿を消し、同じ位置に、中性的な人物が現れた。180cmの痩身で、歳は精々30半ば。柄のない紺色の和服をしっかり着て、腰まで届く長い白髪を一本に束ねている。浅黒い肌と、赤い両目。体のところどころがなく、その代わりに桜の枝葉があるところを見ると、この人物も『森の意志』であるようだ。その人物は、前髪をかき上げながら言った。
「これでどうだろうか?この体であれば術を使うこともできない。文句はなかろう」
男性の声にしてはやや高く、女性の声にしては少し低い。どちらともつかない声だった。
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