五章二話

「それで、大学の駐車場よね?みんなもう着いてるかな……」

「ユリが一番遠くだから、そうじゃないかな?」

侑里は登校するまでにバス――場合によっては自転車――と電車を二回乗り換えている。全校生徒の中でもかなり遠くから通っている部類だ。

「大学に入ったら榊先輩みたいに寮生活にしようかなぁ……。高校生の内は頑張るって宣言しちゃったから頑張らないとだし」

その後も、他愛のない話をしながら二人で集合場所に向かう。集合時間にはまだ大分余裕があった。

今日参加する文学愛好会の部員は結局兼部ではないいつもの面子だけであった。体育会系の部活と掛け持ちしている生徒も多いため、当然のことと言えば当然のことである。

「あれ?」

集合場所には、他の部員は既に全員来ているようだった。菊川と斎藤、榊に蓮野、柏原かしはら、柚木――文学愛好会だけに所属している部員は、菊川と斎藤と侑里以外は神徒ではない――の隣に更に一人。

「あ、おはようございまーす。茂手木先輩、楠木先輩」

「秋原……桃さん……?」

そう、この前会った秋原桃がそこにいた。

「えっと、なんで桃さんはここにいるのかしら?」

言葉を探しながら、萌子は桃に訊く。その疑問には、菊川が答えた。

「二週間前だったかな?柏原と柚木と遊びに行ける数少ないチャンスで、四月から部員になるから前倒しで入部させてくれないかーって私のところに来てね。部屋に空きはあるし、四月一日に帰ってくるわけだし、親御さんに確認したら二つ返事でOK出すしで、部員として連れて行くことにしたのよ。萌子には言った気がするけど、言わなかったかしら?」

萌子が記憶を辿るが、首を横に振る。

「いえ……覚えがありません」

「あれ?言ったはずよね?確か参加部員が確定したときに、丁度全員いるからって口頭で」

斎藤に話を振ると、斎藤は頷いた。

「ええ、僕は聞きました。茂手木も聞いていたはずです」

「侑里は?」

菊川が今度は侑里に話を振る。

「えっと……」

聞いた覚えがなかったが、菊川も斎藤もとなると、自分の勘違いかもしれないと侑里は感じた。だが、萌子は聞いていないと言う。萌子がそんなぼんやりしているとも、大事なことをメモしないとも考えにくい。ましてや言葉にはしてないが、萌子は間違いなく桃を苦手としている。何かしらの対策を講じないはずがない。

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