四章六話

「この装甲板、実物を見ることはできないんですか?」

の疑問に、雨岡はすぐに答えた。

「できるよ。ウチの研究所の地下で、研究の成果は全て保管しているからね」

「見せてくれませんか。自分で見なければこんなものに納得することなどできない」

「いいとも。早速向かうとしよう」

二人が同時に立ち上がる。と、咲岡の目に飛び込んで来たものがあった。資料の山に隠れて、大きな絵画のコピーが挟まっている。座る時には丁度雨岡の影になっていて見えなかった位置だ。咲岡がそれを引っ張り出してみると、雪原に浮かぶ大きな一本の木が描かれている絵画であった。見えない羽でも生えているかのように、複雑に伸びた根は雪原を捕まえていない。『青銅の門』にもどこか似ているように思える文様を、幹の凹凸が描いている。人によっては、生物の表皮――象や鯨のような大型哺乳類か、爬虫類、あえて言えば竜――を連想することだろう。現実に雪原にこんな樹木が生えていれば凍裂待ったなしだろうに、見事に育った樹木である。葉をよく見れば、小さなツボミをつけているらしい。

「教授、これは一体……?」

「ああ、その絵か。百年以上前の絵だよ。人物画ばかり描いていた画家なんだが、一枚だけそんな絵を遺していてね。不思議なことに強力な能力を持つ神徒ほどその木が『真の青銅の門』だと言うんだ。互いに情報交換などしていないのにね。絵のタイトルが『孤独の樹』であるだけに興味を惹かれるんだ。もしかしたら、『青銅の門』は見つかってないだけで他にもあるのではないか、とね」

まじまじと『孤独の樹』を見つめながら、咲岡は呟いた。

「百年以上昔と言うと、このツボミは花開いた後なのだろうか……」

その呟きを聞いて、雨岡は目を丸くした。

「今まで研究所の神徒たちには全員その絵を見せてきたが、その言葉を聞いたのは初めてだ。なるほど、確かに百年も経てば花を咲かせ実を結ぶことだろう。種が取れるかもしれない。今度調査団に要請してみるとするか。お手柄だよ、咲岡君。君のおかげで人類はまた進歩したかもしれない!」

一人で盛り上がる雨岡に、咲岡は苦笑を返す。

「お褒めにあずかり、光栄です」

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