四章五話
「不安定ではあるものの、中学生や高校生というものは高いターナ値を出すんだ。その彼らが互いに高め合えば一体どれほどのターナ値が出るのか、気にならない神徒研究者などいないよ」
研究所では同一の能力ないし類似した能力でグループを組んでもらっているが、それで高まるターナ値など大したものじゃないからね、と雨岡は笑うが、咲岡は渋い顔をする。
「少年少女に何をさせようとしてるんですか」
「勿論、技術の発展だよ。それ以上のこともそれ以下のことも求めていない。『青銅の門』の出現によって我々の世界は変えられてしまった。それならば可能な限り良い結果を導き出そうとするのが、我々の努めではないのかね?」
そもそもだ、と雨岡は続ける。
「通信技術は世界でも有数の神徒の力を万人に使えるようにしたものを、神徒の力で量産した果てだ。ターナ値が反応していないというだけで、理論上のターナ値は三千にも四千にも及ぶものだという研究まである始末だ。さらに言えば調査団に支給されている『万能薬』だがね、あれも神徒の力を使わなければ生産も量産もできないものだ」
調査団には不測の事態に備えて赤い錠剤が支給されている。一粒飲めばどんな痛みでも感じなくなり、出血が止まるという薬だ。四肢切断などの事態にならない限り、飲むことは禁止されている。一度団員の一人が紛失したと嘘をついて分析したことがあったが、その際にはどんな薬物にも当てはまらない反応が出たのみだった。
「あともう一つ、わが大学で開発した技術がある。これも神徒の能力を掛け合わせることで実現できた技術だ。まずは使い方のレポートがある」
そう言って、雨岡はごく簡素なレポートを出した。咲岡が受け取り、目を通す。
「神徒から採血した血を『万能薬』の量産手法と同様の手順によって増殖させ、装甲板を作りだす。この装甲板は……核爆発にも耐える!?」
「いかんせんまだ不安定なものだがね、君の見た頭で65口径を受け止めた女性も同様の技術を使っている可能性があると考えれば、納得できるものではないかい?」
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