第22話 Aクラス
うだうだとしながら、クラスメートと教室に入っていった。
学校は一から五年生まであり、十五歳の成人式と同時に卒業する。
全国民対象の義務教育だが、当然、家の仕事を手伝わなければならない奴もいる。
そうした人たちのために、学びたいことを選択出来るコース分けがクラス毎になされているのだ。
Dクラスは読み書き計算が中心だ。
前世の小学校レベルだな。
仕事のある生徒が多いので、このクラスだけ学校はずっと午前授業だ。
Cクラスは専門的なことをさわりくらいまで勉強する。
たいていは剣術や商いのイロハなどが主となる。
Bクラスは大学のような仕組みになっている。
基礎的なことが出来る前提で、授業を自由に組めるのだ。
素質があれば多少の魔法も習える。
ここでは能力に応じて卒業後の就職先も紹介され、公務員のような仕事に就けるのでほとんどの人はこのクラスを目指す。
Aクラスはエリート集団だ。
他のクラスと違って人数が十名までしかいないし、一定の基準を満たさないと入れない伝説のクラスとのこと。
将来は軍の幹部や国の重要な役職などに就くことが義務づけられる。当然、任意ではあるが。
最近では、ここから後に剣聖となる人物が輩出されたらしい。
もはや国民学校とか言ってられない。
そんなAクラスに俺と乃愛が編入された。
当然俺に拒否権はない。
乃愛は親に許可を取り、覚悟を持って決めてくれた。俺が望んだ訳では無いが、乃愛がそうしたいとのこと。
俺達の他にはあと四人いて、その内の一人はロザリアだ。
ロザリアは俺達を見るなり、笑顔で近寄ってきた。乃愛はイヤそうだ。
「サーネイル様。同じクラスになれたこと、嬉しく思いますわ」
「お、おう。良かったな」
「むーっ」
「あら、ノルン様。そんなに警戒なさらなくても結構ですのに。これでも私、貴女を認めているんですのよ」
「じゃあ、さっくんとの事も認めてくれる?」
「それは追々話し合うとして、初日から揉めることもありませんでしょう?」
「……うん、そだね。でもさっくんは渡さないから!」
「それでこそ、張り合いがあるというものです」
うん。なんとか無事に解決したようだ。
うん。終わったからね。
乃愛さん?そろそろ腕を離そうか。
あれ?離せない。キツすぎるよ乃愛さん?
ちょっ…そんな目で見ないでよ。
上目遣いとか反則っ……わ、分かったから。
可愛いすぎる。うん。
そういうわけで乃愛とずっと腕を組んでいたら他のクラスメートや、担任の先生が入ってきた。
「はーい皆さん、席についてくださーい!座席表はここにありますのでー」
高めの声で優しくそう言った先生は男だ。
髪が長いし、顔もすごく美人だけど男だ。
事前に担任は男だと父上に聞いていなければ、俺も女だと思っただろう。
ざわざわしながらみんな座席に着いた。
「はーい。今日からこのAクラスを担当することになりましたー。ルイーザ・カールバンデといいますー。皆さん、よろしくお願いしますねー!」
すげえマイペースな話し方だな。
綺麗な声だし、笑顔も素敵だ。
でも男だ。
一体どれだけの男が絶望してきた事だろうか。
考えるだけでも恐ろしい。
まぁ、とりあえずルイ先生と呼ぼう。
「よろしくお願いします。ルイ先生」
「あらー、ルイ先生なんてー。いいですねー。サニーくんですねー。よろしくお願いしますー。ではー、サニーくんから自己紹介をしてもらいましょうかー」
「分かりました」
大丈夫。全校生徒の前で挨拶したんだ。
ここはたったの六人だ。
余裕だな。うん。やるぞ。
「えーっと、代表挨拶をさせていただいたサニー・ンザーロです。貴族という立場にありますが、みんなと仲良く出来たらいいなと思います。よろしくお願いします」
だけど、
うーん。本人達に任せよう。
「はーい、ありがとうございますー。では成績順に続けてくださいねー」
成績順か。乃愛は何位なんだろう?
順位は個人にしか伝えられないからな。
「はい。えっと、試験で二番になりました。ノルン・アモールです。みんなと楽しく出来たら嬉しいです。あとさっくん、サニー君の彼女ですっ!これからよろしくお願いしまーす」
二番って乃愛かよ!
まぁそうか。
あれだけ魔法が使えたらそうなんだろう。
ってか堂々と彼女宣言しちゃったよ。
まぁ、良いんだけどね。
良いんだけども、言っちゃうとさ、許嫁が黙ってないんじゃないかなぁ?
「試験三位のロザリア・フェロー二でございます。ご存知フェロー二伯爵の跡継ぎであり、サニー様の許嫁でございますわ。皆様よろしくお願い致しますわね」
言っちゃったよ。
事情を知らない四人は「えー!?」とか「あらあら」とか言ってるし。
「あらあらー、三角関係というものですねー。先生はそういうのには疎いからー」
疎(うと)いのか。そうだろうな。
「はい。あーっと、四位のアルバート・ルドマンだ。剣術が得意で騎士団長の息子だ。みんなよろしくたのむ」
やっと出てきた、常識人。
コイツとは仲良くやれそうだ。
アルって呼ぼうっと。
騎士団長か、父上も同じくらいの腕前らしいけど、どのくらいなんだろう?
「ご、五位のリカルド・キースです。え、えっと、座学と土魔法の中級が得意です。よ、よろしくお願いします」
リックだな。リックにしよう。
人見知りなのかな?緊張して声が震えてるよ。
メガネ系男子だし、頭良さそうってのは、先入観が偏ってるのかな?
「六位のルナマリア・ミュールよ。ウチは最近になって広い農園を経営することになったから、必要な時は言ってね。あと、この農園はサーネイル様がお一人で作られたから、私はサーネイル様をとても尊敬しているの。みんなよろしくね」
ちょっと待とうか、ルナよ。
サーネイルさんはなんにもしてないんだ。
エマさんって人と、黒竜丸って相棒が作ったんだよ。
というかあの楽園って、ルナの家が継いでくれてるんだ。それはありがとうだな。
「はーい、みんなこれから楽しく仲良く過ごしましょうねー。先生も頑張りますー」
楽しく仲良く出来るのだろうか?
先が思いやられるんだけど。
そんな感じで一年Aクラスは結成された。
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