第64話

「コウキが神隠しにあった…」

情けない声のままフウヅキさんはそう告げる。

「神隠しって…」

俺は慌てないように事情を訊く。嫌な予感がするからと神社に一度逃げたけれど、約束があるからやっぱり帰ると鳥居をでた瞬間に消えたらしい。


「コウキは色んなものに好かれやすい体質をしてるから。あ、ケイトもだけど」


困ったものだと言いたいように溜息を吐くフウヅキさん。俺ももろに溜息が出てしまった。

けど、目の前ではまだケイトが泣きじゃくりながら俺の服を掴んでる。


「取り敢えず、合流しませんか?」


そう提案したのは俺の方からだった。特に消えたのが神社の近くならその辺りを探した方がいいだろう。

俺が人探しの魔法が得意だったら…なんてことも頭によぎったけれど、今そんなことを悔いてもしょうがない。


話はフウヅキ神社の鳥居の前でということでまとまった。


「ケイト、コウキさんちょっとトラブルに巻き込まれたみたい。だから、一度フウヅキさんのところに行こう」


周りの目を気にしながら頭を撫でると、ケイトは激しく首を横に振る。

「ここで会うって約束したんだもん」

子供みたいな言い方。

「でも、トラブルに巻き込まれたって」

どうしたらいいのか戸惑いながら言葉を紡いだけれど、やっぱり首を横に振られた。


「約束した場所から離れたらすれ違っちゃう。だから、ここで待たなきゃいけないの!」


叫ぶようにそう言われ、情けないことに俺は少しカチンと来てしまった。

「じゃあ、なんで俺に電話してきたの?」

眼鏡の奥のケイトの瞳が激しく動揺してる。


「待ってるだけじゃ会えないよ。約束だってただ約束って言ってるだけじゃ意味なんてない。だから行こう。約束を守るために」


自分で言った言葉なのにどこか自分に跳ね返ってくる。ランタンがカランと音をたてた。

「ごめんなさい…」

ケイトはそういうと涙を拭って

「お兄ちゃんを探すの手伝って、キリ君…」

と言った。その顔付はどこかコウキさんに似ていた。

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《ゲムトモ版》魔術師とお茶を一杯。 時計 紅兎 @megane-dansi-love

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