第36話

キリ君に連れてこられた不思議な店の店主、トキザカ トオルさんは唐突に世界の時間を止めた。そして兄の事を“有り得ない”と言った。


「魔法の原理を君にも教えてあげるよ」

トオルさんは不気味に笑いながらそう言った。魔法の原理…確かに私は魔法について何も知らない…魔法なんて兄やキリ君が使ってる摩訶不思議な力でマジックに似ているようなものと言う意識だけだった。

「君が聞きたくないと言っても私は聞かせるよ」

トオルさんはそう言うとテーブル越しに手を伸ばして私の顔を掴んだ。私は彼から目が離せなくなった。

「さて、何から話そうね。そう、他の世界は知らないけれど、この世界の魔法と言うのは幸せの魔法しか存在していない」

トオルさんは真面目な顔でそう言った。

「幸せの魔法…」

私はそう呟いた。

「そう、幸せの魔法。誰かを幸せにする魔法か、自分を幸せにする魔法。魔法と言うものはこの世界にはその二つしかない」

トオルさんはそう言うとうっすらと笑った。そして続けてこう言った。

「世の中ではこの二つを白魔法と黒魔法って分けられている様だけど、私は黒魔法を使う黒魔術師だ。自分の幸せの為に力を使っているからね。この世界の魔術師はある時期が来たら黒か白どちらを使うかを決めないといけない。どっちかしか使えなくなるそれがルール」

「それで何故兄が有り得ないんですか?その原理だと兄はいつも私の為に魔法を使ってくれています。だから白魔術師なんじゃ無いんですか?」

私はトオルさんを睨むようにそう言った。私はどうも兄を否定された様な気がして苛立っていたのかも知れない。

「ケイトちゃんのお兄さんはねぇ、最強の白魔術師と言われているんだけど…モノクロの魔術師とも言われているんだよ。つまり、強い力があるのに黒も白も使える異常な魔術師なんだよ。有り得ない」

トオルさんは見下す様な目でそう語った。

「そ…れに…何か問題が…ある…んです…か?」

私は途切れ途切れにそう言った。さっき自分の事を言われた時以上に恐かった…私は心の中で兄の名前を呼んだ…

トオルさんは私の問いには答えなかった。

「そう言えば、ケイトちゃんはどうして魔法が使えないんだろうね?十分その資格があるのに…何なら私が開花させてアゲル」

そう言うとトオルさんは私の唇に自分の唇を重ねようとした…

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