第26話
私の義兄は出会った時から高等魔法が使えた。それでも兄はキリ君が現れるまで高等魔法は私に見せなかった。それは兄の弱さなのかも知れない…
キリ君と初めて出会ったのは雪が舞い始める季節だった。
私の家はアパートの四階で丁度電柱の位置とベランダが被っていてベランダに出ると丁度電柱の頭が見える。
あの夜はとても冷え込んでいた。兄は大学で作業があり夜の八時を回っても帰ってきていなかった。あらかじめ遅くなる事が分かっていた兄は出かける前に魔法瓶の中にジンジャーティーを作っていってくれていた。
私はそれを飲みながらマフラーを編んでいた。
私は兄が居ないのに目を瞑っているのが不安で部屋の電気を消して作業をしていた。
窓の外をみると雪が降り始めていた。
「そう言えば小さな頃にお兄ちゃんはこんな夜には魔術師が現れそうだなんて言ってたな」
私はそんな事を呟きながらクスリと笑って窓の方に近付いた。
街の静寂さと粉雪は何だか似合っていた。
でも、独りで家に居ることは何だか不安で自然と涙が零れた。
「行けない。お兄ちゃんが心配しちゃうや」
私は急いで涙を拭った。
その瞬間だった。どこからともなくカラン、カシャンと言う不思議な音が響いた。その音は今までに聞いたことのない音だった。
私は窓をそっと開けてみた。
理由は悪いものではない気がしたから。私のこのカンは基本的に外れた事がない。
そして体の半分程窓を開けた時だった。目の前にふわりと優しい光が降りてきた。
それはランタンの中に入っていてそのランタンは長いマフラーに少し体より大きなコートを着た少年が持っていた。マフラーにもコートにもびっしりと雪がこびり付いて少年は少し震えながらそれをはらおうとしていた。
私は何を考えていた訳でもないが体が勝手に動いた。
兄の入れたジンジャーティーをカップに注ぐとベランダまで走っていった。
「良かったら飲んでいって」
私は兄の様に笑ってそう言ってみた。少年はとても驚いていたけれどそのお茶を飲んで一言
「美味しい」
と言ってくれた。
それが私とキリ君の出会いだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます