第18話 学生支援作業
ほぼ10分後。
リアカーで来た留学生会の男女学生3人に梱包済みのパソコン40台を渡す。
プラスチックコンテナ4個に10台ずつでちょうど40台。
小型のリアカーに余裕を持って収まる。
「それでは代金は後程振り込みで」
「よろしくー」
リアカーはゆっくり去って行った。
「あのリアカーで坂は大丈夫なんですか」
留学生会は男子寮と女子寮の間にある留学生会館にある。
そして校門と寮の間はそこそこ急な坂道。
人力のリアカーだと厳しいのではないだろうか。
幅は車がすれ違える程度にあるけれど。
「心配ないです。あの3人は全員魔法攻撃科、肉体強化魔法位は簡単に使います」
エイダ先輩がそう解説。
なるほど、見た目だけで考えてはいけない訳か。
ここは魔法特区で、そして魔技高専だから。
「さて、まずは貴方のパソコンデス」
金髪のでっかい男子学生、ロビー先輩が私に紙袋を渡す。
紙袋の中は梱包済み新品同様ノートパソコンだ。
「有り難うございます。お代はここで払えばいいんですか」
「私達もこれから上に行きますし、上で話しながらにしましょうか。今日はお茶菓子もいいのがありますから」
という訳で、流れでそのまま学生会室へと行く羽目になってしまう。
断り切れなかった訳では無い。
半ば興味もあった訳で……
◇◇◇
学生会室で左側の奥から3番目の席、綱島先輩の隣の席に案内される。
ちょっとだけ気が楽に。
何せ基本的に知らない人の知らない部屋だ。
少しでも話した事のある先輩の横だと少しは安心できる。
「今は役員が交代して席がかなり空いているの。
あと、今のうちにそのパソコン、メールなんかの設定をやっておいた方がいいですわ。一般的なWindowsと少しやり方が違う面がありますし。わからない事は今のうちに相談しておけば楽ですよ」
もっともだと思いパソコンを出す。
電源を入れて最初は初期設定とやらでちょい暇。
なので何という事なしに尋ねてみる。
「こういう学生支援なども学生会の仕事なんですか」
「これは今年からだね」
会長席の小柄な女の子がそう返事した。
わりとフランクな性格らしい。
「昨年色々アンケートを取ったら、パソコンとか教材の安いのが欲しいという案が結構あったんだ。特に留学生から。だからOBの会社に協力して貰って、今年からこういう形で一番お金がかかるパソコンだけは安いのを扱おうって事になって」
「よろしければどうぞ」
副会長の女子学生が私の席にシュークリームとお茶を置いてくれる。
「あ、すみません。手伝います」
「大丈夫よ。この部屋は副会長の担当なの」
そう言って彼女は各席にシュークリームとお茶を配りつつ追加説明。
「このパソコン販売のような事業はお金がないと出来ないですしね。他には魔法工学科の課題制作時の材料提供支援くらいでしょうか。これも同じ会社に委託しているのですけれどね」
「というか、要はそのOBってのがそんなに遠くない代の学生会の先輩なんだ。本業は魔技大の3年生なんだけれど魔法工学を使った材料の制作販売で儲けていてさ。税金対策という事でこうやって学校に還流している訳」
「ですからこのパソコン事業も、恐らくぎりぎり黒字か、下手したら赤字なんでしょうけれどね」
うーん、景気のいい話だ。
貧乏学生の私にも少し分けてもらいたい。
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