第49話Regrets - 未練

49.


"瑛士突撃1"



== 樋口瑛士 + 眞奈 + 眞奈の母親(松本綾子) ==




 瑛士が訪ねて来た日は平日で父は仕事で家に居なかった。


 そして私たちは・・母と私はリビングで息子の将大(まさひろ)を前に

寛いでいた。思わぬ人の突撃に母も少なからず驚いたことだろう。


 私と息子に会いに来たと言われれば、お帰りくださいとも言えなかった

母の招きで瑛士がリビングに入ってきた。


 

 「やぁ・・」




 「いきなりどうしちゃったの?」




 「あっ、お義母さん(元)ほんとにいきなりですみません」

 瑛士は私の質問に対して改めて母に向かって詫びた。



 「瑛士さん、ソファにどうぞ・・お茶でも入れましょうね」

 母は、瑛士さんの好きなホットコーヒーを淹れに台所に立った。


 

 「驚かせてごめん」

 彼は私にもそう言った。


 


 「どうしても君と君の息子に会いたくなって・・」




 「茶化して申し訳ないけど・・言うわ。訳わかめ!!」




 「ふははっほんとだよねぇ~」



 他人事かよっ!


  そう思ったけど、瑛士が切なそうなオーラ全開だったのでしぶしぶ

 息子のご尊顔を見せてあげた。 ご尊顔って、ヤダッ私も大概上からの

物言いだわ。胸の内とは言え。幸せな結婚生活を送っていた頃にはとても

信じられない私の言動だわ。




 瑛士はしばらく将大を眺めた後で、恐る恐る私に向かって手を差し出し

抱かせてもらえないだろうか、と言った。



 はぁーーっ?

 あなた、もしかして腹いせに将大を床に叩きつけたりしないでしょうねぇ?

 なんて少し怖いことが頭を過ったのだけれど、断る理由もなくてしぶしぶ

私は息子の将大を瑛士に渡した。




 「俺さぁ~、赤ん坊抱くの初めてなんだ。柔らかくてかわいいなぁ~」

 瑛士はことのほか、デレデレしている。


 あなたの子でもないのに、よく言うわっ。

 気がつくと私はまたもや彼に悪態をついていた。


 私は自分で思ってる以上に瑛士に対して憎しみを抱えていたようだ。

 彼の一挙手一投足に、悪感情で反応してしまうのだ。 参った。


 そんな私の気持ちなんて知らずお気楽な彼は息子との時間を幸せそうに

堪能した。


 「瑛士さん、コーヒーできましたよ。冷めないうちにどうぞ」



 「お義母さん、ありがとうございます」

 瑛士は母にそう言ってからも、しばらく息子の存在を感じ抱き心地に

酔いながら息子の顔を眺めていた。






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