第36話Regrets - 未練

36.


== 松本眞奈 + 神崎 蓮==



 離婚した元夫の瑛士から2年振りに便りがあった。

 1通のハガキ。


 きっと私がスマホを買い替え、メールアドレスかやら電話番号

まで変えてしまい、文明の利器を使えなかったからだろう。


 時節の簡単な挨拶と、お決まりの文言でお元気ですか・・と。

 

 -あれから俺はずっと独りでいます。

  眞奈に会いたくてたまらない。-


 元夫の気持ちが綴られた、たった2行の文章。


 読んでも、何の感慨も湧きはしなかった。


 私の心が寂しがっていた時には、他の女たちと現を抜かしていた瑛士。

 女友達の大勢いると思われる瑛士が寂しい? 無いない。


 ただの常套句なのだろうけど、敢えて私は反応してみる。 


 何か小説や漫画などの中の話のようでむちゃくちゃこそばゆいけど

 瑛士、私は今度こそ真実の愛を見つけたの。(キャァ...ハズカシイ)

 だからこの先一生、あなたに関りを持つことは無いと思うわ。


 返信に書くとするなら、の言葉を胸の中で呟きながら

ハガキを2枚に破りゴミ箱へ投げ捨てた。


 その後、私が返事を書くことは無かった。




・・



 蓮さんと付き合い始めても基本私の日々の生活のリズムは以前と

そう変わらなかった。それは結婚とか一緒に暮らそうという話が

出てこなかったから。


 私が仕事帰りに蓮さんのいる場所に寄って少し顔を見て会話したり

子供たちが境内に来ている時に私がお寺に行けた時は一緒に遊んだり

そして週末は蓮さんに手料理を振舞い、蓮さんは泊まって帰る、そんな

感じで以前と変わったのは蓮さんが週末泊まりに来るようになった

ことくらいだった。


 

 蓮さんが我が家を訪れた日。




「昨日、君の元旦那が寺へ来たよ」


 げっ、食事の支度をしてた私は驚いて手にしてた菜箸を思わず

落としそうになった。


 私にはハガキを、蓮さんには会いに・・。

 何考えてるのだろう、あの瑛士は!



 「何しに?」




「何しに来たのやら・・だな。ははっ」




「どうやら君に、並々ならぬ未練がありそうだった」



「あり得ないわぁ~、そんなことぉ」




「そっ?」




「うんつ、天地がひっくり返ったってあ・り・え・ま・せぇえんっ」



「そっか、そうなんだ」




「ねっ、それより今日はこんな新しい〇〇メニュー作ってみたの。

食べてみて」



眞奈の旦那、あんたちっとも相手にされてないぞ。

ざまぁみろっ!


 眞奈は料理のセンスが抜群でどの料理も絶品で

この先眞奈のおいしい料理に舌鼓する度に眞奈の元旦那に対して

もう、二度とあんたはこのおいしい手料理が食べられないなんて

ご愁傷さまあ~と言い続けそうな俺がいる。 



 こんな別嬪で性格もよく、働き者で男ならみんなお付き合い願い

たくなるような女性を妻にしながら、何やってんだか。


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