第26話

「ラヤのせいではないよ」

 自宅に戻ってからもずっと落胆するうちに、隣に座った兄さんの優しい声が届く。

「もっとうまく言えたら、ここまでの事態にはならなかったのかな」

 考えるのは、そればかり。

「彼が黙っていたのも事実だ。ラヤが責任を感じる必要はないよ」

 エグナーは、拘束された。

 手荒だけはどうにか免れて『人通りが少ない場所から離れないように』と言いつけられるだけで済んだけど。

 今は、前にうちが案内した物置の中にいる。手足をしばられるとか、扉をふさぐとか閉じこめられこそしなかったけど、不自由な思いをさせることになった。

「次の徴収まであと2日だ。2日だけ耐えてもらえばいいだけだよ」

 たった2日の拘束。兄さんはそう考えるんだ。

 あと2日しかないのに、エグナーはもうこれ以上の行動ができない。動くことを禁じられてしまった。

 草を見つけられない。目的を達成できない。

 拘束よりも、絶望のほうが強いと思う。

「してあげられることがあったらよかったのに」

 うちにもできること、もうないのかな。

 徴収者に突き出される運命のエグナーを、ただ黙って見ているしかないのかな。

「……ご飯、届けてあげたら?」

 投げかけられた提案に、顔をあげる。優しい笑顔の兄さんが、そこにいた。

「飢餓に苦しませたい思いはないよ。誰かが食の世話をするべきだろう?」

 兄さんが示してくれた、エグナーにできる道。許されるのなら、したい。

「いいの?」

 うちはエグナーのために動いてもいいの?

「空腹に苦しませるのは、僕は反対だよ」

 やわらかい笑みを前に、心が少しだけ軽くなった。こんなことでも、まだうちにもできるのかな。

「徴収者の彼が、どんな目的があって来たんだろうね」

 エグナー本人も思い出せない目的。徴収者の仲間という事実。

「悪いことはしないよ」

 うちはそう思えた。信じたかっただけかもしれない。

 今まですごしてきて、エグナーに悪意を感じたことはなかった。にじみ出るのは、いつだって優しさだった。

「ラヤは優しいね」

 兄さんの手が、うちの頭頂部にくしゃりとふれた。あたたかい体温がじんわり伝わって、沈んだ心が癒される。優しさにもっとひたりたくて、兄さんのほうにゆっくり体を傾けた。

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