第20話
翌朝。朝ご飯のあとに、草が生えていそうな場所をエグナーに聞かれた。該当する場所で、人通りがまれな場所を複数教えた。その場所に行くエグナーを見送って、うちも家を出た。
リージュの部屋の扉を開けたら、ベッドから上半身を起こすリージュの顔が向けられた。
「いらっしゃい」
変わらない笑顔は、うちの心を癒してくれる。
「調子はどう?」
「前よりいいかも」
「本当!?」
兄さんの新しい薬、効果があったのかな?
「少しだけね。プラシーボ効果かもしれないけど」
そうでないことを祈ろう。新薬を続けたら、リージュは少しずつ元気になる。うちも信じよう。その思いがなにかを変えられるかもしれないから。
「今日も持ってきたよ」
「はーい」
朝に兄さんから渡された薬を出す。この薬が、リージュの救世主になってくれるのかな。薬より、開発してくれた兄さんが救世主かな。
うちの採取した素材が、この薬の役に立っていたみたい。リージュの、兄さんのためになれていたとわかるだけでうれしい。
使われた素材はレアではないけど、成長が遅いものだった。こまめに採取できる素材ではないから、大切にしないと。
「これもね」
リージュのためにくるんだ朝ご飯も渡す。
「やったぁ」
薬とは違う、またたく笑顔を見せてくれる。この笑顔を、外で見られたら。そんな日を、新薬が届けてくれるかもしれない。
「徴収はどうだった?」
「大丈夫だったよ」
今回も無事に島のノルマは達成できて、徴収者は島を出た。一息つく余裕もないまま、次の徴収のために励む日々が始まる。
リージュも『やれることはやりたい』と協力を申し出ている。体に無理の出ない範囲で、裁縫とかを手伝っている。
治療に専念してほしい思いしかないけど、リージュが『なにもできないのは嫌だ』って聞かないから。島の人たちが励んでいるのに、自分だけベッドで寝ているだけなんて心苦しいのかな。リージュの気持ちもわかる。
リージュの気持ちをくんで、無理をしないことを条件に手伝いをさせることになった。家の人がペースを考えて様子を見守ってくれているから、リージュに負担がかかったことはない。
「よそ者って、結局見間違いだったのかな?」
リージュはまだ、その事実を知らない。リージュどころか、島のほとんどの人が。
なにかを目的に、島に来たエグナー。どんな目的かわからないけど、リージュの安心のためにも真実は言えない。
「そうだったんじゃないかな? あれから新しいウワサも聞かな――」
窓から見えた光景のせいで、言葉が続けられなかった。
「あれ……」
つられて窓の外を見たリージュが、おびえた声を漏らす。
一点を見つめる島の人たち。その中心にたたずんでいたのは、エグナーだった。
どうしてここにいるの? 『島の人に見つからないように』って言ったのに。
感情の赴くまま、リージュの部屋を飛び出した。
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