天罰 4

この年の冬


我が家はとても静かで平穏な日々が続きました


長男は刑務所

次男は破門

父は相変わらず愛人宅


家には母と私とテキ屋の仕事に行く若い衆が数人出入りする程度になり

何十年振りという位静かな日々は私にとってはこの上ない幸せでした


父は……愛人宅と事務所の往復で忙しくほとんど家には帰らなくなりました


が……


愛人 のふてぶてしさは相変わらずで

父と毎夜スナックや居酒屋などに出掛け

全く酒が呑めない父を隣に置き自分はガンガン呑んで酔払いベタつくしまつでした


私が家族とご飯を食べに行った時など

たまに2人に出くわす事もありました


お互い他人の様な振りをしてシカトしていましたけどね

しかし……気にしない素振りをしてはいましたが

母にとってはさぞかし辛い事だったと思います


正月も過ぎた頃です


愛人 から我が家に電話が頻繁に掛かる様になったのです

内容は……


「離婚して」


「あの人と籍を入れたいの」


と 母にせがむのです


愛人 の風上にもおけない と言うのはこの女の事です

愛人 をするのであれば

「相手の家庭は壊さない」

「人目につく所で会わない」

など……愛人なりのいろいろなルールと言う物があるんじゃないの?


そんな事も守れない

今や 愛人 と言う言葉さえも似合わない只の


「色女」


そんな電話攻撃にあっているのに父は何も言いません

そして……そんな父にも愛人にも嫌気がさした母は姉や次男と相談をして


「離婚」


を決断したのでした


母曰く……

「そんなに欲しいのなら駄々っ子チャンにくれてあげましょう」


そして母は離婚用紙に判を押すと 愛人宅 に1人で出向いたのです

愛人宅 に着くと父も居ました


母は無言で離婚用紙を父に差し出した


その時の父の顔といったら

本当に鳩が豆鉄砲をくらった様な顔をしていたそうです


まさか 母が本当に離婚を決意するなど、これっぽっちも思ってなかったのですから

そりゃぁ 父にとってはびっくり仰天だな


しかし……隣には 愛人 が……

別れたくないとも言えなかったのでしょう

父はオロオロとした様子を見せながらも何も言わず離婚用紙を受け取りました


そして母は


「ご苦労様」


との台詞と共に勝ち誇った様な笑みを浮かべている 愛人 に背を向け玄関を出ようと振り返ると……

玄関の少し開いていたドアの横で


目を真っ赤に充血させ……

拳を握り締め体を震わせながら……必死に怒りをこらえている次男が立っていました


1人で敵地に出向いた母の事が心配で後をついて来てたのです

母が玄関を出ると

次男は奥に居る2人を睨み付けながらも 無言でドアを締め


母の肩に手を回し軽く


ポンポン。


と叩きました


その時母は必死に止めていた涙が溢れ出してしまったそうです

しかし……良く怒りをこらえたもんだと私は思いましたが

この時次男は覚醒剤から縁を切る為

薬の誘惑と戦っていたらしく


理性


が顔を出し始めていたのかもしれないですね



さて晴れて離婚成立となり

これで父と縁が切れる……

と 私は有頂天になっていましたが


甘かった……


離婚したとはいえ 我が家の生活は何ら変わりもなく

若い衆も出入りしていたので たまに父もやって来たりして

たいして前と変わらないしっっ!!


ただ家に泊まるという事が無くなったのがせめてもの救いですね


父と母が離婚してから 愛人 の姐さん気取りは輪を掛けて酷くなって行きました

お天道様の下を堂々と歩ける立場になったんですから当たり前ですが


ってか 愛人 の頃から堂々としてましたけど……


そして一年が過ぎた頃……



━━天罰が下るのです━━


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